マギ長編
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―――――シュウ……
――シュウ…
『シュウ!大丈夫かっ!!?』
シュウ「……キリ…?あれ、ここ…」
シューティアは辺りを見回す。
そこはいつもの見慣れた自分達のベッド。
つまりは自分の部屋だった。
『お前、村の図書で倒れてたんだ。……夜になっても戻ってこないから、匂いを辿って行ったら、シュウが本の上で青い顔して……俺』
気が動転している為か、キリフォードの説明が少したどたどしい。
シュウ「……その本は?」
シューティアはまだ青い顔をしたまま、本の在り処を訊ねた。
『俺…シュウの事でいっぱいだったから……』
図書にそのままだ。
それを聞いたシューティアは、眉を寄せた。
怒ったのだろうか…。
シュウ「そう…、ありがとうキリ。僕の事を第一に考えてくれたんだね」
『――当たり前だッ』
途端に涙ぐむキリフォードに、シューティアは苦笑いで言葉を続ける。
シュウ「……けど、出来るならその本を借りてきて欲しいな…。まだ…途中だから」
シューティアの頼みにキリフォードは首を縦に振ると、さっそく村の図書へ向かった。
シューティアはキリフォードの背中を見送ると、静かに自分の手を握り込んだ。
長「……シュウ」
シュウ「父様…」
声の方向へ視線を向けると、扉に寄り掛かるように、父が立っていた。
長「……例の書物を、読んだんだな…?」
シュウ「はい…」
長「どう思った…」
シュウ「……信じられません。僕が知っているロードと言う人物は、親友であるキリと肩を並べる程の実力者でした」
しかしそれも……
シュウ「脚色だったんですね…」
目に見えて落胆する息子に、父は真っ直ぐな言葉を言い放つ。
長「だが、あれはあくまでも昔の人物達だ。……これからどんな結果を生もうと、お前もキリフォードも私の大切な息子だ」
シュウ「……はぃ…」
父は真剣な眼で続ける。
長「そろそろ、奴等相手に誤魔化し切れなくなってきた…。奴等は……キリフォードを捜している」
シュウ「…どうして…キリなんでしょう…」
長「シュウ」
シュウ「ぇ……? 父様、何か…?」
長「…シュウ、まさかお前、キリフォードが……」
『シュウ!!この本で良いのか?』
シュウ「ぅ…うん。ありがとうキリ」
長「シュウがすまないな、キリフォード」
『なに言ってるんだよ、お父上…。兄である俺がちゃんと見てやれなかったから、こうなっちまったんだから…』
乾いた笑みを浮かべて、本をシューティアに手渡す。
シュウ「ねぇ…、キリ。中の内容…読んだ…?」
『いや?真新しい匂いが付いてたから、間違いないと思ったんだけど…』
シュウ「そう…よかった……」
シューティアは本を抱き込み、安堵を吐いた。
長「それじゃ、無理をせずに休むんだぞ」
一言告げ、父は複雑な表情を一瞬浮かべ、部屋を去っていった。
下へ続く階段を下りながら、長は先程問い掛けた質問を脳裏で反復させていた。
「…シュウ、まさかお前、キリフォードが……“憎い”のか…?」
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