マギ長編

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『懐かしいなぁ。あれからもう1年経つんだな』


シュウ「あの頃から相変わらず、僕は皆にイジメられてるんだね…」

シューティアは苦笑いを浮かべ、続いて溜め息を吐いた。




シュウ「その頃から、僕はキリに護ってもらってばかりか……」


『気にすんなって。親友を助けたり、護るのは当然だし…それに、【狼従勇者】のキリみたいで、俺すごく嬉しいし!』

心からそう思っているからこそ、キリフォードは満面の笑みを浮かべた。




シュウ「…そろそろ帰ろうか。父様や母様が待ってる」


『今日の晩飯は何かなぁ。豚の肉食いてぇ』


シュウ「ふふ、母様の料理はどれも美味しいでしょ?その内豚の肉も出るよ」


『まぁな〜』





二人は来た道を辿り、村へと歩を進めた。




『……? なぁシュウ』


シュウ「何、キリ?」

キリフォードは村の入口に目を向けていた。
そこには、顔を布で隠した数人の人影…。そして彼らと言葉を交わす茶髪の男性。



シュウ「…父様?……何を話されているんだろう」

そう言ってシューティアは父の下に駆け寄り、話を聞きに行った。



『(なんか…あの人達の匂い、黒煤みたいな…。…どこか噎せ返る匂いがする)』

これだけ離れているというのに、キリフォードは彼らの匂いをそう感じた。



遠目で見ていると、父親である長が突然シューティアを自分の後ろに隠した。

魔狼牙であるキリフォードには、この位置からでも、シューティアの怯えた表情が窺えた。


すると、キリフォードは腹の奥で、何か黒く重い鉛のようなものを感じた。


『(……何…だ?)』

シューティアの苦しそうな表情を見ると、ムカムカしてくる。
しかし比例するように、どこからか力が漲ってくる。


その悲しみの原因となるモノを“消せる”んじゃないかと思えるくらい強く恐ろしい力が……。




悩み、葛藤している内に、覆面の者達は森の方へ姿を消していった。

それを確認すると、キリフォードは二人の所へ。




長「キリフォードか。……見苦しいところを見せちゃったな」

苦笑いを見せ、長はシューティアの頭を撫でた。



『さっきの人達は…?』


長「何でも、旅をしながら色々な人を占う、占い師やまじない師と言っていたな。……そんな魔力には感じなかったが…」


キリフォードは最近知った事を頭に浮かべた。


魔狼牙は五感に優れているが、その中でも嗅覚が異常に発達している。
その嗅覚は、魔力の【量】や【質】さえも嗅ぎ分ける者も居るとか。



シュウ「…やっぱり父様はすごいなぁ。魔力の量を匂いで解るなんて……」


『…そうだな!』

うっすらだが自覚はしていた。

キリフォードは先程、彼らの匂いを事細かく嗅ぎ分ける事が出来た事から、自分も長と同じ力を持っているんだと。


しかし、シューティアはまだその力を持っていない。
…もしかすると、これからもその力は覚醒しない可能性もあるだろう。


シュウ「いつか僕も、父様みたいに…!」

純粋に父親を尊敬し、目標としている親友に、「自分も父と同じだ」なんて言えない。


だけど、それでいい。

キリフォードは親友であり義弟であるシューティアが笑って居てくれれば、それでよかった。


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