マギ長編

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シュウ「それにしてもビックリしたよ…。いきなり傷口舐めるんだもん」


『俺は、お前が男って事に、ビックリ』


二人して互いの顔を見合い、クスリと笑った。



『1つ…いいか?』


シュウ「なんだい?」


『お前、俺と同じ匂いがする。その…俺は【魔狼牙】って…一族なのか?』


シュウ「うん、そうだと思うよ?
髪は黒いし、さっき一瞬だけだったけど、君の目が赤く変わったから……」

そう言ってシューティアは自分の髪に触れた。



『【魔狼牙】は…みんな髪が黒いのか?』


シュウ「…うん」


『…お前の髪は、黒くない』


シュウ「……うん」







『――キレイだな』


シュウ「えッッ!?」

シューティアはその大きな瞳を見開き、声を上げた。




シュウ「ご、ごめん!急に声を上げたりして。……ありがとう、そんな風に言ってもらったの初めてだよ」

シューティアは両頬を赤く染め、可愛らしくはにかんだ。



『……お前、本当に男か?』


シュウ「え!? ひどいなぁーっ!」



*****




それからこの二人はよく遊ぶようになった。
ある晴れの日には丘まで出掛けたり、雨の日にはシューティアが家から持ってきた書物を読んだ。

最初の内はロクに字も読めなかった【少年】だったが、シューティアが丁寧に教えた結果、少々小難しい本でも読めるようになった。





『なぁなぁシュウ!この本も読んで良いか?』


シュウ「あ、【狼従勇者】だね!僕もその物語好きなんだ!」


一緒に読もうよ!
そう言うと、二人肩を並べて仲良く本を読み出した。






シュウ「この物語さ、僕らの一族みたいじゃない?主人を護る狼男のキリとかさ」


『俺も主人公のロードみたいな人に付きたいなぁ。
“従者”としてじゃなくて、“親友”として対等に接してくれんだもんなぁ』


シュウ「でも実はロード自身も、同じ狼男だったのは驚きだよね?“親友”で“主と従者”かぁ…」

そう言えば…シューティアは【少年】に尋ねた。



シュウ「君には、名前が無いんだっけ?」


『…あったと思うけど、親が死んでから、俺の名を呼ぶ人が居なかったから。……もう自分の名前も思い出せない』

顔に影がかかり、【少年】は下唇を噛んだ。
シューティアはそんな彼を見て、優しく提案する。



シュウ「なら、僕が決めて良いかな。君の名を……」


『え……』



シュウ「キリ。この物語の狼男から取ってキリ…、キリフォードでどうかな?」


『キリフォード……』


シュウ「嫌かな?」


『キリフォード…、良い名前だ』


シュウ「本当!?」

シューティアは嬉しそうにはにかみ、「よかったぁ」と安堵を吐いた。




シュウ「これからよろしくね、キリ!」


『こっちこそ、よろしくなシュウ』




そして月日が経って、キリフォードはシューティアの家に引き取られた。

シュウはキリフォードより1つ年下だった事で、キリフォードは立場上シュウの兄のような存在になった。


シュウの両親はとても気さくで優しかった。
特に父親は魔狼牙の長を務めていた事で、村中の者から信頼されていた。

彼もシュウ同様髪は黒くはなかったが、それでも立派な人だった。


しかしそんな人の子供でも、シューティアはよく子供達に虐められていた。



『てめぇら!シュウをイジメてんじゃねーぞ!!』

そんな子供達から、キリフォードはいつもシュウを護っていた。

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