マギ長編

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――今から11年前…







『――っぉら!!』


バキッ!!
子供1「ぅああ!!」


黒く長い髪を振り乱し、【少年】は自分より大きな少年を殴り飛ばした。



『まだやんのか、あぁ!!?』


子供1「も…もぅしなぃ…、約束する」


【少年】は殴り飛ばした少年に跨がり、拳を振りかざす。




『チッ…、二度とこいつに近付くんじゃねーぞ。――おら、さっさとどっか行けよ!』


子供2「ひ、ひぃぃ!!」

子供3「い、行こうぜ…!」


子供達は怪我をした少年を担ぎ、足早に去って行った。








『……大丈夫か、シュウ』

そう言うと、【少年】は金髪の少年、シューティアに手を差し出した。


シュウ「…うん、平気だよ。ごめんね、いつも僕の所為で……」


『何言ってんだよ、お前は何もしてねーじゃん』


シュウ「……だってさ」

シューティアは横髪を一房摘まむ。


シュウ「…僕の髪、皆と違って…金色だし……」

シューティアは自分の髪色を嫌っている。
【魔狼牙一族】は、元来からの黒髪の一族で、高い戦闘能力を有している。

しかし、シューティアの一家はどういう訳か、髪は黒でもなければ、けして戦闘能力が高い訳でもないのだ。




シュウ「僕…皆と同じ血が流れてるはずなのになぁ…」

シューティアの琥珀色の瞳が自信なく揺れる。



『俺はお前の家いいと思うけどなー。俺らみたいな脳ミソまで筋肉みてぇなバカより、一族を導けるお前の父さんの方がよっぽどスゲーよ』


【少年】の言うように、シューティアの父は【魔狼牙一族】の長を務めている。

それはシューティアの一家は戦闘能力は低いものの、その分知慮である為だ。




『それに黒髪より、お前の髪の方がよっぽどキレイだよ。だからさ、きっとあいつらはお前の髪色に嫉妬してんだよ、な?』

【少年】はニコリと笑い、シューティアの髪を掬う。







『俺はお前の髪、好きだよ』






*****







シュウ「ねぇ、どこまで行くの?」


『もうちょっとだって!』


二人は村からかけ離れた、素通しの道を進んでいた。





『――ほら、着いた!』


シュウ「! わぁ〜〜…!」


目の前には、美しい夕日が今、地平線に沈もうとしていた。



シュウ「すごい!こんな場所があったんだね!」


『俺の取って置きの場所。連れてきたのはシュウが初めてだな』


シュウ「え、いいの?僕なんかに見せて」


『別に見せて減るもんじゃねーし…、シュウは…俺の大切な親友だからな』


【少年】は気恥ずかしいのか頬を掻き、明後日の方向に視線を向けた。















『俺さー、確かに誰かを護れるだけの力は必要だと思うんだ。けどさ、それって戦闘力だけじゃないと思うんだ』

沈みゆく夕日を眺めながら、二人は草原に腰を下ろした。



『ただ戦うんじゃ、たぶん誰か怪我をするんだ。……さっきの俺みたいに』

【少年】は自分の手を擦る。



『でも、お前なら違う選択が出来るんだと思う。人を傷付ける事なく、納得の出来る方法で…』





シュウ「君は…本当に優しいね」


シューティアは柔らかい笑みを浮かべた。


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