マギ長編
□31
1ページ/1ページ
「アリババ様…本当に行かれるのですか…?」
まだそんなに日が昇っていない明け方、アリババとキリフォードは身仕度を整え、街の入口に立っていた。
アリババ「ああ。【迷宮】での財宝は、みんなの最低限の衣食住に使ってくれ…」
あと…、アリババは使用人に言付けを託した。
アリババ「青くて長い髪の子供…アラジンが来たら “アリババは、バルバッドにいる” …そう伝えてくれ」
「…承知致しました。アリババ様、お気をつけて」
使用人は礼儀正しく頭を下げ、街へ戻っていった。
アリババ「行こう、キリ」
アリババは魔狼に変わったキリフォードの背に跨がり、促す。
キリフォードは地を蹴り、徐々に速度を上げる。
アリババ「なぁ、キリ」
アリババは唐突に切り出す。
アリババ「アラジンは、生きてるよな」
問い掛けるよりも、自身に言い聞かせるように言った。
アリババ「あんなスゲー奴が死ぬわけねーよ。…だから俺は、俺のやるべき事をやりながらあいつを捜す。絶対見つけるんだ」
キリフォードの毛並みを握り締め、アリババはここには居ない親友に向かって告げる。
アリババ「そして一緒に冒険しよう…!約束したんだ、だから待っていてくれよ…アラジン!」
こうしてアリババ達はバルバッドへと旅立って行った。
この二人の事をモルジナアが知るのは、まだ少し後の事だ。
*****
そしてその意中の彼は、チーシャンから遠く離れた大地に居た。
アラジン「僕が元いた場所はチーシャンという町なんだけど、知らないかい?」
「ああ…そんな町の名を、西方の隊商から聞いたことがあるぞ」
「あの西の山々を何十も越えた先……草ではなく、砂の国があるんだと」
「なんでも、草原からは歩いて5年も掛かるとか…」
アラジン「ええ!?そんなに遠いのかい!!?」
ババ様「大丈夫じゃよォ。二週間後に春の定期市があるから、その時来る西方の隊商の車に乗せてもらい」
アラジン「よかった…そうする!二週間だけお泊まりするよ!」
アラジンは安堵と「お泊まり」という事に喜びを現した。
トーヤ「でもどうしてそんなに早く帰りたいの…?」
アラジン「…友達との約束があるんだ」
ドルジ「へー友達との約束か…。お前の友達は、どんな奴なんだ?」
アラジン「アリババくんって言って、勇気があって優しいんだ。あとキリくんは【魔狼牙】って一族で、とっても強いんだ!」
アラジンは嬉しそうに話した。
すると黄牙一族の皆がざわめき始めた。
「【魔狼牙一族】って…」
「嘘だろ…本当なのか…?」
アラジン「??…どうしたんだい、皆…」
トーヤ「アラジン…魔狼牙一族…って本当なの?」
アラジン「え、うん。確かにキリくんはそう言ってたよ…?」
ドルジ「【黒髪】【赤色の瞳】【特異な獣姿】これ全て当てはまるか!?」
アラジン「う…うん。間違いなくキリくんだよ…?」
アラジンが肯定すると、先程以上にざわめき出した。
アラジン「おばあちゃん…。どういう事なの?」
訪ねるとババ様は「うむ…」と真剣な表情をする。
ババ様「アラジンや、落ち着いて聞きなされ…」
アラジン「う、うん」
ババ様「お主の友達のその魔狼牙……、最後の魔狼牙一族かも知れんのじゃ…」
アラジン「どういう事だい」
ババ様「今から11年前、彼らの住む村に、【大きな事件】が起こったんじゃ…」
_