マギ長編

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「アリババ様…本当に行かれるのですか…?」


まだそんなに日が昇っていない明け方、アリババとキリフォードは身仕度を整え、街の入口に立っていた。



アリババ「ああ。【迷宮】での財宝は、みんなの最低限の衣食住に使ってくれ…」


あと…、アリババは使用人に言付けを託した。



アリババ「青くて長い髪の子供…アラジンが来たら “アリババは、バルバッドにいる” …そう伝えてくれ」



「…承知致しました。アリババ様、お気をつけて」

使用人は礼儀正しく頭を下げ、街へ戻っていった。





アリババ「行こう、キリ」


アリババは魔狼に変わったキリフォードの背に跨がり、促す。

キリフォードは地を蹴り、徐々に速度を上げる。











アリババ「なぁ、キリ」

アリババは唐突に切り出す。



アリババ「アラジンは、生きてるよな」

問い掛けるよりも、自身に言い聞かせるように言った。



アリババ「あんなスゲー奴が死ぬわけねーよ。…だから俺は、俺のやるべき事をやりながらあいつを捜す。絶対見つけるんだ」

キリフォードの毛並みを握り締め、アリババはここには居ない親友に向かって告げる。



アリババ「そして一緒に冒険しよう…!約束したんだ、だから待っていてくれよ…アラジン!」



こうしてアリババ達はバルバッドへと旅立って行った。

この二人の事をモルジナアが知るのは、まだ少し後の事だ。





*****



そしてその意中の彼は、チーシャンから遠く離れた大地に居た。


アラジン「僕が元いた場所はチーシャンという町なんだけど、知らないかい?」


「ああ…そんな町の名を、西方の隊商から聞いたことがあるぞ」


「あの西の山々を何十も越えた先……草ではなく、砂の国があるんだと」



「なんでも、草原からは歩いて5年も掛かるとか…」



アラジン「ええ!?そんなに遠いのかい!!?」



ババ様「大丈夫じゃよォ。二週間後に春の定期市があるから、その時来る西方の隊商の車に乗せてもらい」


アラジン「よかった…そうする!二週間だけお泊まりするよ!」

アラジンは安堵と「お泊まり」という事に喜びを現した。



トーヤ「でもどうしてそんなに早く帰りたいの…?」


アラジン「…友達との約束があるんだ」


ドルジ「へー友達との約束か…。お前の友達は、どんな奴なんだ?」



アラジン「アリババくんって言って、勇気があって優しいんだ。あとキリくんは【魔狼牙】って一族で、とっても強いんだ!」

アラジンは嬉しそうに話した。
すると黄牙一族の皆がざわめき始めた。


「【魔狼牙一族】って…」

「嘘だろ…本当なのか…?」


アラジン「??…どうしたんだい、皆…」


トーヤ「アラジン…魔狼牙一族…って本当なの?」


アラジン「え、うん。確かにキリくんはそう言ってたよ…?」



ドルジ「【黒髪】【赤色の瞳】【特異な獣姿】これ全て当てはまるか!?」


アラジン「う…うん。間違いなくキリくんだよ…?」

アラジンが肯定すると、先程以上にざわめき出した。



アラジン「おばあちゃん…。どういう事なの?」

訪ねるとババ様は「うむ…」と真剣な表情をする。



ババ様「アラジンや、落ち着いて聞きなされ…」

アラジン「う、うん」


ババ様「お主の友達のその魔狼牙……、最後の魔狼牙一族かも知れんのじゃ…」


アラジン「どういう事だい」


ババ様「今から11年前、彼らの住む村に、【大きな事件】が起こったんじゃ…」

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