マギ長編
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アリババ達が【迷宮】を攻略し、4日経った。
その頃にはジャミルの葬儀が営まれ、アリババは街の領主となった。
アリババ「アラジン…」
アリババは彼が帰ってきた時の為に、豪華な料理を用意し、待ち続けた。
しかしそれから3週間経っても、アラジンは帰っては来なかった……。
「いや〜〜〜っ、旦那様、今日もいい男っぷりで〜〜!」
アリババが領主になって、奴隷を解放し、溜まっていた借金を完済した。
その時から、この男、ブーデルはアリババの周りをうろつき始めた。
「今日は私めも極上の女と酒を用意しましたぞ!」
そう言いながらブーデルは、高価なグラスにブドウ酒を注ぎ、アリババに媚を売り出す。
アリババ「なぁおじさん…恥ずかしくねーの?俺なんかのご機嫌とってさ…」
「全然、恥ずかしくなんかございません!!」
ブーデルは胡麻をすりながらアリババに詰め寄っていく。
「いやこの私のブドウ酒がですね…東方で高く売れるんですよ〜。だからですねぇ…、旦那様の持ち帰った財宝を投資するには、うってつけですぞ〜?」
アリババ「いや…いい」
「そう仰らずに、是非!」
断るアリババに構わず、ブーデルはブドウ酒のビンをグイっと近付けた。
その時、アリババが眺めていた窓の向こうから、黒い人影がこちらに近付いて来て――
『――よう、アリババ』
窓枠に着地した。
その瞬間、ブーデルは「ヒッ!」と小さく悲鳴を上げ、後ずさった。
アリババ「どうだった、キリ」
『…駄目だな。砂漠をずっと探し回ったが、アラジンらしき子供を見たって人は居なかった』
キリフォードはテーブルに置いてあったブドウ酒を飲み干し、答えた。
アリババ「そっ…か」
『……悪ぃ、何の役にも立てなくて』
キリフォードは、アリババが【迷宮攻略】してから5日後の夜に帰って来た。
彼はチーシャンから離れた街に転送されたらしい。
しかし、本来なら半日も掛けずに戻って来れたのだが、そこの街医者に傷を診られてしまい、4日と介抱されていた。
アリババ「傷の方はどうだ?」
『だいぶ塞がったぜ。まぁ…塞がってなくても俺はあんたの為に働くけどな』
キリフォードは胸元の傷を見せて答えた。
アリババ「無理は…すんなよ」
『……あんたもな』
二人は苦笑いを浮かべ、窓の向こうを眺めていた。
夕暮れ刻、モルジアナが訪れてきた。彼女は、自分達を解放してくれたアリババにとても感謝していた。
そして、彼女は「いつか故郷へ帰る」と、恩人の言葉を胸に秘めていた。
アリババ「なぁ…キリ」
モルジアナが仕事に戻ってから、アリババは傍らに立つ彼に問い掛けた。
アリババ「俺も、いつまでも立ち止まってる訳にはいかないよな」
『あんたは、それでいいんだな…?』
アリババは立ち上がると、キリフォードに真っ直ぐな目を向けた。
そして口元に弧を描くと、告げた。
アリババ「俺…、バルバッドに行くよ」
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