マギ長編
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その巨大で厳格な【ジン】を目の当たりにし、一同は茫然自失する。
ジャミルにいたっては、あまりの出来事に怖じ気づいてしまい、我を忘れるばかりか失禁してしまう始末。
そんな彼を一瞥し、【ジン】は言う。
「王になるのはお主か…?
……いや違うのう…。黒の器…。だが、他人に作られた贋作じゃ」
次に目を向けたのは、先程の捕縛から脱したモルジアナ。
「…違うな。縛られた小さな器…。だが強い生命力は感じるのう…」
続いてはアリババ。
「お主は……?」
品定めするように【ジン】は彼を見る。
「…………プッ」
アリババ(なっ…!?)
『……なんだ、今笑った…?』
アリババは笑われた事に対し、抗議の声を漏らす。
「ピィピィ喋るな…聞こえんわ…」
そう言うと、【ジン】は見るみる縮み、部屋に収まる程の大きさに。
「ふぅ、さて…他には…おらんかの…?」
そう言って【ジン】はキリフォードを見た。
すると「ほぅ…!」と感心の念を漏らした。
「……お主、底の知れぬ広き器を持ち合わせておるな…。それに伴い…そこの小娘にも劣らぬ…強い生命力も感じる…」
しかし、
「すでにお主は…誰かに生命を預けておるな…。…実に残念じゃ…」
――そして少々興味深い点もあるが…
最後に、【ジン】はアラジンを見ると「これは…!」と深々と頭を下げた。
それにアリババは驚きを隠せず、【ジン】とアラジンを交互に見る。
そんなアリババを余所に、アラジンの笛からウーゴが姿を現した。
「あ、貴方様は!!」
【ジン】が驚き、敬意を表して、下手になってウーゴの話を聞き始めた。
「なるほど、大体の事情は解り申した」
ウーゴとの会話が終わり、【ジン】は「アモン」と自身の名を名乗った。
アモン「あなた方の【迷宮完全攻略】を…認めます!」
【迷宮】の主たるアモンに【完全攻略】を言い渡され、アラジン達は喜び、早速アリババは財宝を回収に回った。
キリフォードも時折胸元を抑えつつ、アリババの手伝いをした。
『はぁ……っ!…ぅ』
アリババ「! おい、平気かっ!?」
アリババがキリフォードに駆け寄ろうとした、その時。
ドォ――――ン…!!
アリババ「な、なんだぁ!?」
突然、【迷宮】全体に及ぶ大地震が起きた。
アモン「何者かが外から【道】を閉じようとしておる…」
アラジン「【道】?」
大きな揺れの中、アリババは必死に財宝をかき集め、纏める。
アリババ「ほら、これはお前の分!アラジンはこれな!こっちはウーゴくんの持ち帰る分!」
『なんか…俺の分…少なくね?』
アリババ「怪我人に無茶させられるかよっ!」
彼の言葉に、キリフォードは笑みを深めた。
アモン「どうした!?お主らは帰らんと言うのか!?」
アモンの作った出口に乗り込み、振り返ると、モルジアナが迷っていた。
アラジン「お姉さん、早く!」
アリババ「なんでそんな奴気にかけるんだよ!?置いてっちまえば自由になれるのに…!!?」
『奴隷って言うのは…見えない鎖が…どこまでも、奴隷の行動を制限しちまうんだ…』
キリフォードは表情を歪め、苦しそうにそれを見ていた。
『だから…、同じ立場の誰かがその鎖を断ち切ってやれれば…』
モルジアナがジャミルに手を伸ばした、その時。
大柄のもう一人の奴隷…ゴルタスがジャミルと彼女の間に割り込んだ。
すると、驚くことにゴルタスが言葉を発した。
彼は今まで自分のやって来た事に懺悔し、モルジアナに自分の願いを託した。
ゴルタス「――故郷へ帰れ…モルジアナ」
そう言って彼は、モルジアナの足に付けられた鎖を刃で断ち切った。
キリフォードはその光景をしっかりと目に焼き付け、モルジアナを加えた一同は出口へと上がっていった。
――ゴルタス…。あんたは立派な戦士だったよ。
あんたがどれ程の命を奪ったなんて関係ない。
最期にあんたは、これから羽ばたく少女の命を救ってみせた。
――誇り高き黄牙の戦士よ、俺は…あんたを忘れねぇ…。
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