マギ長編

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青白い顔をし、今にもプレッシャーで押し潰されそうな彼女は剣をアリババに振り下ろした。



ザクッ!!

身を貫く生々しい音。
そして生物から流れるそれの匂いが辺りに広がった。


赤々としたそれは、アリババの美しい金糸を汚した。


アリババ「あ…ぁ…!!」
アリババは全身の痛みに構わず、上体を起こし彼の名前を呼ぶ。


アリババ「キリッッッ!!」

彼の細身な体の中心部に深く突き刺さった剣。その傷口から大量の血液が流れていた。


アリババ「キリ!キリっ!キリッ!!」
幾度も彼の名前を呼ぶ。
誰の目から見ても致命傷と解る。


アリババ「キリフォードっっ!!」






『き…こえ…てるよ、主…』

その口が弧を描く。


『正直…ギリギリだったな…。あんたが望んでくれた…お陰だな』


この光景にジャミルは勿論、モルジアナも恐怖した。


『言った…だろ?魔狼牙は、主が強く望む事に従うんだ』

チョーカーから白いルフ達が溢れてきた。

そして…キリフォードの傷口からは、今まで見たことのない“黒い鳥”が僅かに溢れていた。



『ゴホッ…!』
口の中に溜まった血液を吐き出し、キリフォードは剣を身体から引き抜いた。


カラン…
金属音を出し、剣は床に転がった。


キリフォードはアリババの前に膝を付き、傷付いた彼の姿を虚ろな瞳で見詰める。


『主…主…、』
覚えたばかりの子供のように、キリフォードは「主」と何度も呟く。


アリババ「キリ……?」


『主…、…傷が……、俺…』


アリババ「キリっ、俺は…平気だ から…」

アリババは痛みに堪えながら、キリフォードの手を握る。


アリババ「俺より…お前の方が…」


『我が主に…傷を…』

アリババはゾクリと身の毛がよだった。
アリババはこの表情を知っている。

自分が砂漠ヒヤシンスに襲われた時に見せた冷酷な顔。



――魔狼牙一族

元来の従属一族だが、プライドが高く、滅多な人間には従おうとしない。
しかし一度主と認めると、主人の望みを叶えたり、幸福をもたらしてくれる守人となる。


そしてその反面、その忠義深さ故、主人に害を及ぼす者には容赦なく災いをもたらす――



強大な【災厄の化身】である。






キリフォードの負った深い傷口から、だんだんと黒い鳥が溢れ出てくる。








アラジン「――キリくん」

白く美しい純粋なルフ達が、視界を覆った。



『ア ラ…ジン…』


アラジン「アリババくん…キリくん…大丈夫かい?」



ジャミル「や…やあ、またお目覚めだね」

アラジンの登場により、正気に戻ったジャミルは自分のエゴを主張しだした。



アラジンが石の杖に力を込めると、見るみるルフ達がアラジンに集まってきた。

それを見たジャミルは興奮しだし、嬉々とした表情を見せた。


アラジンが走り出したと同時に、モルジアナが相対する。





ジャミル「彼こそが……、偉大なる創世の魔法使い……!!」

【マギ】!!

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