マギ長編

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目前には、獲物を狩るように、一散に駆ける少女の姿。

常人の目からすれば、かなりの速度で駆ける彼女の姿を目に捕らえるのは難しいだろう。


しかし少女は猛獣でも、ましてや奴隷でもない、少女は【ファナリス】

暗黒大陸と呼ばれる土地に馳せる“地上最強の狩猟民族”



あと数mでアラジンに手が届く……しかしそれは叶わなかった。




モルジアナ「――どうしてッ!!」


『どうして、ってなぁ…。まぁ、俺は【魔狼牙】だしな』

ニヒルな笑みを浮かべる彼の腕の中には、気絶しているアラジン。


モルジアナ「私は…あなたよりも早くに走り出した筈…!何故っ!?」


『だから…、【魔狼牙】だからだよ』

漆黒の髪をなびかせ、凜と立つこの少年は【魔狼牙】


“地上最強”がファナリスに対し魔狼牙は、


草木生い茂る広大な草原を駆け抜け、かのファナリスをも凌ぐ迅速の脚を持つ“地上最速の戦闘民族”なのだ。




『俺から見れば、嬢ちゃんは歩いてるようにしか見えねぇよ…』

言い終えると共に、キリフォードは駆けた。

慌ててモルジナアが後を追う。



モルジアナ「―――待てっ!!!」


『良いぜ?俺を捕まえる事が出来ればな』


地を蹴って壁に張り付き、

壁を蹴っては宙を切り、

地に着地すれば風のように駆け抜ける。


まるでモルジナアを挑発するように、彼は駆け抜ける。



『ほら、どうした?息が上がってきたぜ』


モルジアナ「はぁ…、はぁ…っ、くっ!」

鋭い目付きでキリフォードを睨むが、モルジナアは指摘された通り息が上がってきている。



――この調子なら、嬢ちゃんを傷付けずに済みそうだな…。


ちらりとアリババを見る。
すると自然と口角が上がった。

――さすが主だ…!

アリババは、研ぎ澄まされた王宮剣術でジャミルを圧倒し、凛と構えていた。











ジャミル「モルジアナー!!今すぐ助けろモルジアナー!!」


アリババ「…キリじゃねーんだ、無茶言うなっての」



ドガッ!!

『おぉっ…とッ!!』

アリババ「!?」

気が付くと、アリババはキリフォードに抱き抱えられていた。



アリババ「キリっ!!え、なんであの女…、一瞬で…!?」


『痛っぅ〜っ!!!ガードだけで腕一本イカれちまう…』


アリババ「キリ、アラジンは!!?」

『ああ、アラジンは置いてきた。平気だ、ヤバくなったらすぐに飛んでいく』

アリババを降ろしながら、キリフォードは話す。


アリババ「キリ、この女の脚力…!」

『嬢ちゃんは“ファナリス”って言う脚力の優れた戦闘民族だ。舐めて掛かったら、腹部持ってかれるぜ…』


ジャミル「…さ、どうする君ィ〜。確かに“速さ”では魔狼牙が上だろうが、“強さ”に関してはファナリスのモルジアナの方が上だよ」

にたにたと苛立つ笑みを浮かべるジャミル。


――魔狼牙の事、そう詳しくは知らねーみてぇだな…。

呆れた目でジャミルを見詰める。


するとアリババは、手を伸ばし、モルジアナに語った。



アリババ「なぁ!モルジアナ、俺達と行こうぜ!」

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