マギ長編

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不意に、キリフォードは右目を隠した。


『……逆らえば、死ぬよりも恐い体罰をされる。余計な口を利けば、その口に刃を向けられる…。全て知ってるさ、俺も奴隷だったから』

キリフォードの瞳が赤く変色する。



モルジナア「…なら、何故あなたは再び【主】となる方に従っているんですか。やっぱり、どこまで逃げても奴隷は奴隷だからじゃないんですか…?」


キリフォードはモルジアナの頭を撫でた。彼女は肩をビクつかせ、一歩下がった。

『……今、叩かれると思ったんだろ?平気だ、全ての手が暴力を振る訳ないんだ。優しく差し伸べてくれる、小さな手だってある』

優しい眼差しで、キリフォードは彼女を撫で続ける。



『なんでまた【主】に従っているのかって訊いたよな?……俺ら【魔狼牙】は“主人”が居てこその一族だって事もあるが…、』


キリフォードはそこで言葉を切ると、フッと軽く笑う。



『…今の嬢ちゃんには解らないかも知れねぇが、いずれ俺の気持ちも理解出来るさ』

そう言い残すと、彼は風と共に姿を消した。




モルジナア「………」




*****





アリババ「キリ…大丈夫かな…」



『よっ、遅くなったな』


アリババ「キリ!」

アラジン「キリくん!!」

『Σおおぅ!!』

キリフォードが戻って来ると、二人は彼の安否を確かめる。


アラジン「キリくん怪我はないかい!?」

アリババ「領主に何もされてねぇか!?」


『ぉ、おいおい…、俺を何だと思ってんだよ。彼の最速の民【魔狼牙】だぜ?お嬢ちゃんを抑えて、即刻逃げて来たさ』


アリババ「ぶはっ!何だよそのドヤ顔!すげぇ腹立つわ!」

『ヒデェなあんたっ!…っとそれは置いといて、扉の謎は解けたか?』



アラジン「うん。僕がウーゴくんと一緒にいた【がんじょうな部屋】にも、これと似た扉があったんだ。

開ける時はね、こうやるんだよ。えっとね…」

そう言うとアラジンは扉に両手を当て、ググッと力を込める。

すると扉の隙間から小さな光る鳥が……



アラジン「ひらけ〜っ…ゴマッ!!」


アラジンが言葉を唱えると、扉が独りでに開いて行く。

期待を胸に秘めたアリババを筆頭に、三人は先に歩を進めた。



*****



しばらく進んでいくと視界が曇っていて、前方が見えづらい状態だった。


アラジン「ケホッ、ケホッ」

アリババ「ゲホゲホッ…」

『大丈夫か、二人共』

後方でむせる二人に気を遣いつつ、キリフォードはくしゃみを1つした。


『(一瞬、靄(もや)かと思ったが、これは砂埃か……。
にしても…、ここに来た瞬間からむせ返る程の強い不思議な匂いだ…。近くに何かあるのか…?)』



アリババ「おっ?やっと何か見つけっ……」

『危ねぇ!!』


アリババ「……!」

アリババが足を止め、その先を見ると…




『――へぇ…こりゃすげぇな』

見渡す限り一面、古代都市。
天井を突き上げる程の高さを誇る塔がその中心地に建っていた。



アリババ「なぁアラジン、キリ、行ってみようぜ!この街のどこかに俺達の目指す“宝物庫”があるはずだ…」

アラジン「うん!」

『ああ!』

アリババの言葉で、三人は一番目立つ塔へと向かった。



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