マギ長編
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『アリババぁぁあ!!』
刹那、キリフォードのチョーカーからルフ達が溢れる。
オオオオオオォォ――!!!
アリババ「っうぁあ…!」
すると肌を刺すような鋭い風が吹き荒れた。
アリババ(ヤベっ、串刺しに……)
アリババは自身の死を覚悟した。しかし、一向に痛みがやってこない。
『アリババ…、平気か…?』
アリババ「っっ…キリ?」
アリババはキリフォードにお姫さま抱っこで抱えられていた。
下を見ると、連なっていた刃は全て根元から折れていた。
『……悪ぃ、今はこっち見ないでくれ』
アリババから顔を背け、姿を見せないようにする。
アリババは自分を支えている彼の腕を見ると、爪先から二の腕にかけて、まるで獣の足ような武装をした腕があった。
そして一瞬見えたキリフォードの瞳が、右側は水色のままなのに対し、左側だけ深紅に変わっていた。
『―――もういいぜ』
アリババを下に降ろした時には、いつも通りのキリフォードだった。
腕も瞳も、元のままだ。
アリババ「さっきのって…?」
『――この通路の先から、不思議な気配がする。もしかしたら【宝物庫】に通じてるかもしれねぇ』
行こうぜ?
そう笑顔で問い掛けてくるから、アリババは頷く事しかできなかった。
*****
アリババ「こ、これって…!」
『…間違いねぇな。今までの場所とは桁違いの匂いがする。もしかすると、これが【真実】への扉かも知れねぇ』
試しにアリババが扉を調べて見る。
アリババ「取っ手も何もないし…押してもビクともしねぇ」
唯一解るのは、
アリババ「この扉の印、アラジンの笛のマークに似てるよな…」
『つまり、アラジンが何か知ってる可能性があるのか…』
しかし、アラジンはジャミル達に捕まっている為、この場所には居ない。
「……」
『――! アリババ、こっちだ』
アリババ「へ、キリ?」
『アラジンの声がする。…この先だ』
キリフォードが示したのは、天井近くまで高さがある壁。
アリババ「この先に、アラジンが…!? けどどうやって登るんだよ!」
『――あんたが望めば、それが俺の力になる』
口角を上げて、キリフォードはチョーカーを小突いた。
――いいか、絶対に放すなよ
アリババ「…ああ」
魔狼になったキリフォードは、最大限まで壁から離れ、助走をつける。
――行くぞ、アリババ!
アリババ「行けっ、キリ!!」
ダッ
地を蹴ったキリフォード。
その瞬間からとてつもないスピードだ。
もう瞬きをする瞬間にも壁が目前に迫っている。
ダンっ!!
壁にキリフォードの足がかかった。
速度を緩める事なく走ると、とてつもない重力と遠心力がのし掛かってきた。
アリババ「くっ…ぅ」
――アリババ、あと少しだっ!
残り数メートル。しかしその時、
――ッ!
アリババ「うぁッ!!」
足が壁を蹴り損ない、減速してしまった。
アリババ「わぁあああああ!!!」
結果として二人は落下してしまう。
『っっ!アリババぁあ!』
キリフォードは魔狼から人に戻り、アリババの上着を掴み取った。そして右腕の爪を伸ばし、壁に突き立てた。
数十センチ落ちた後、二人は上から10メートルという所で止まった。
『っっ…!』
二人分の体重を支えている右腕が悲鳴を上げ始める。
アリババ「キリっ!大丈夫か!?」
『大丈夫だ…、って言いてぇけど、正直…キツイ…』
アリババ「キリ、もう良いって!一旦降りて別の方法を考えようぜ!」
『いや、方法ならまだある…。正直、不本意だけどな…』
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