マギ長編

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アリババ「ど…」

――どうする!?


アリババは言葉を詰まらせ、頼みの綱であるキリフォードに視線を寄越した。


キリフォードは眠ったままのアラジンを引き寄せ、領主達を見据える。


ジャミルは不気味な笑みを浮かべ、三人の下へ歩み寄っていく。



アリババ「い…いや〜〜っっ、助かっt」

『アリババ、黙ってろ』

自らの行動を起こそうとしたアリババの口を塞ぎ、彼を自分の背後に隠した。


ジャミル達は一番前に居るキリフォードの前まで来て立ち止まる。


双方の睨み合いになるかと思いきや、突如領主たるジャミルが膝を折った。


『は!!?』 アリババ「え、」

一瞬、何故自分達に…?と思ったが、ジャミルは眠ったアラジンだけを見ていた。





ジャミル「お待ちしておりました、マギよ…。10年待ったよ。君が僕の前に現れるのをね」


マギ?えっ?何…?

アリババが後ろで小さくそう呟いた。



『(こいつからはアラジンの匂いはしねぇ。知り合いではねぇ筈…)』

では何故ジャミルはアラジンを知っているような口振りなのか。




ジャミル「怪我などはしていないかい?」

キリフォードが抱き抱えるアラジンをまじまじと見た後、男の奴隷、ゴルタスを呼び寄せる。


ゴルタスはキリフォードをジっと見詰め、アラジンに手を伸ばしてきた。



『――何してんだよ』
一瞬で伸ばした鋭利な爪を、ゴルタスの首につき出す。

今の間に戦闘体勢を整えたのか、キリフォードの瞳は赤い。


ポカンとした表情をしていたジャミルが、突然拍手し出した。

キリフォードとアリババは顔を見合わせる。



ジャミル「凄いね君ィ!初めて見たよ!」

ハハハ!と軽快な笑い声を上げてジャミルはキリフォードを見る。


ジャミル「その深紅の瞳に漆黒の髪。そしてその技。君はあの迅速の民【魔狼牙】の末裔だね?」

嬉々としてキリフォードを見るジャミル。そんな彼を見て、否、その目を見てキリフォードは冷や汗を浮かべた。


ジャミルの目は初めて見る物への好奇心と言うより、家畜を見るような目だった。


ジャミル「いや〜、噂に聞いていたけど…、良いねぇ【魔狼牙】売り出されていたならきっと買っていただろうなぁ」


『お、俺はあんたの…奴隷じゃ、ない…』
普段から強気なキリフォードが、珍しく狼狽えている。

アリババ「さ…さっきから何なんスかっ!?」


キリフォードの後ろから、アリババは叫んだ。



ジャミル「ああ、そうだ。君ィ、僕らと共に来ないかい?【魔狼牙】なら文句無しに連れてってやるが…どうだろう?」



アリババ「ちょっ!聞いてんスか!!」

アリババがこれだけ近くで声を張り上げていると言うのに、ジャミルはまるでアリババを“居ない”ものとして扱っている。



ジャミル「君、僕の奴r」

アリババ「っ、キリは俺の友d」


『俺は、この…アリババのっ!俺の主人は、アリババ・サルージャだッ!この人以外は従わねぇ!』


洞窟内が水を打ったように静まり返る。



ジャミル「そこの君が…彼の主人?」
ジャミルは訝しげに繰り返す。



ジャミル「冗談はよさないか?そんな一般市民などに、君のような高額なものが買える訳がない」


『俺自らが主と決めた…。金で買われた訳じゃないっ』


ジャミル「……ふーん。なら…」

ジャミルはゴルタスに命じ、無理矢理アリババをキリフォードの背後から摘まみ出した。



ジャミル「君を殺れば、【魔狼牙】は僕の奴隷になる訳だ」


アリババ「殺…?」

『ま、待て!!何してっ』

ゴルタスがアリババに大剣を降り下ろした。

『止めろっっ!!!』

アラジンを抱えている為、キリフォードはその場から動けなかった。



チリッ

しかし少しかすったものの、アリババは身体に染み込んだ経験の動きで攻撃を避け、ゴルタスを後ろ手に縛り剣を首に向けた 。

これにはジャミルも驚き、再び拍手を送った。


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