マギ長編

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ピチョン…




『ここなら入口も1つしかねぇし、大丈夫だろ』

肩に担いでいたアラジンを即席の寝床に寝転ばせ、自身に巻き付けていた布を枕代わりに置いてやる。


アリババ「…にしても驚いたぜ。いきなりアラジンを殴るんだもんなぁ」

ランプを片手に、アリババはアラジンの様子を窺う。



『……この子に笛を使わせるのはもうやめた方がいいんじゃねーか。その笛から、アラジン以上に不思議な臭いがする。恐らく相当の力が籠められてる…』



スカーー


『……何してんだあんた』


アリババ「いやぁ…。アラジンが疲れて動けねぇ間、一番元気な俺がウーゴくんを出せたらなぁって……?」


『人が真剣に話してんのに…、あんたって人は』
キリフォードは頭を押さえて項垂れてしまった。



アリババ「……なぁキリ」

真剣な声が降ってきた。


アリババ「俺達さ、アラジンの事…何も知らねーな…」

『そうだな…』

キリフォードはアラジンの髪を撫でた。そして手軽な布で汗を拭ってやる。


アリババ「まぁ…別に、他人にペラペラ喋る事でもねーもんな」

『……そうだな』

生返事を返すキリフォードを諭す事なく、アリババはアラジンを見て決心したように溢した。




アリババ「なぁ、俺は話すよ。こいつが起きたら…。そしてこいつにも色々聞く」


『…そうか』


アリババ「【迷宮攻略】はこいつが居なきゃ出来ないもんな」

苦笑いを見せて言う彼に、キリフォードも苦笑いを返した。



『あんたも疲れただろ?…今なら気配もしねぇし、今の内にあんたも寝とけよ』

立ち上がり、アラジンの隣を促すキリフォードに、アリババは一瞬戸惑った。


『…ほら、寝ろって』
ぐいぐいアリババの背を押し、アラジンの隣に寝転ばせる。

ありがとうな…。アリババは申し訳無さそうに眉を寄せて言った。



『……俺が見張りをしとく。だから安心して眠れ』


アリババ「なぁキリ…。お前も結構疲れてるんだろ?……だからさ」

無茶するなよ…?

そう言うとアリババは眠りについた。




『……フ、』
キリフォードは柔らかい笑みを浮かべ、アリババを一瞥する。



『それはこっちのセリフだぜ…主。貴方こそ無理しないでくれ』

キリフォードの優しく切な声が、この小さな空間に消えていった。



―――---……‥

――-…‥




どれくらい時間が過ぎただろう。キリフォードは休む間なく辺りに警戒心を張り巡らせ、全神経を駆使していた。



カツーン…


カツーン…



『!』

立ち上がり、耳、鼻などをフルに活用し、出口の穴から覗く。


すると更に身の毛を逆立たせる光景を見た。



『(あれは町のクソ悪徳領主…ッ!)』

人数は三人。
その内の安全な真ん中を歩く男性は、彼の悪名高いチーシャンの町の領主ジャミルだった。


『(それに…あの嬢ちゃんクソ領主の所の娘だったのか)』

先程町で鎖を断ち切った少女は、寄りによってジャミルの所の奴隷だった。


『(そりゃそうか。考えてみりゃ、奴隷なんて下劣な事をすんのはあのクソ領主だよな)』


冷静に頭を働かせ、まずは移動することを考える。

奥に戻り、アリババを起こす。


『起きろアリババ。すぐにでもここを離れるぞ』

アリババ「ん…?キリ、どうしたんだよ」

『俺ら以外の攻略者が来た。それもチーシャンの領主だ』


アリババ「え、…ぁ!?」
寝起きで働かない頭を働かせ、アリババは事の大きさを知る。



『……悪ぃアリババ、俺の不注意だ。見つかる前に移動すべきだった』


アリババ「何言ってんだ。大丈夫だって――」


『いや、手遅れだ。すまねぇ…。

         ・・
まさか…嬢ちゃんがあの民族とは知らなかったぜ…』

冷や汗を流し、キリフォードはいつの間にか背後に立っていた少女に言う。


アリババ「な、なな……あれ!?」



ジャミル「こんな所にいたのか。…手間をかけさせてくれたな」

程なくして領主ともう一人の奴隷、ゴルタスが姿を現した。

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