マギ長編

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アラジン「おーーい!キリくーん!やっとアリババくんが来たよ!」


『おー、わかった!』

小一時間ほどすると、アラジンが洞窟から姿を現した。



アラジン「うわ〜っ!凄いねここ!」

『まさに、って感じだろ』

二人が話し込んでいると、洞窟の方からゲホゲホ…とむせたような声が近付いて来た。


アリババ「おーいアラジン…、先に行くなって…」

全身水浸しな、お待ちかねのアリババが現れた。


『ずいぶんと遅い到着だったが、どうだ?【迷宮】ってかんじだろ?』

心無しか、嬉しそうに尋ねるキリフォードに、アリババは改めて辺りを見回す。


アリババ「…っ、これが…!これが【迷宮】かっっ!!!」

アラジン「ヤッタねーー!」

アリババ「ついに来たぞ!!【迷宮】だぁ!」

ハシャギ出す二人に口元を緩め、キリフォードは切り出す。



『さて、舞い上がってるとこ悪いが、全員揃ったことだし【迷宮攻略】に向けて“宝物庫”を目指さねーとな』

アラジン「“宝物庫”?」


アリババ「ああ!ゴールである“宝物庫”に行けば、財宝と【ジンの金属器】が納めてあるんだ!」


アラジン「へ〜〜。じゃあそのゴールを目指せばいいんだね!
…でも、入口のような穴がたくさん有りすぎて、どれを選べばいいのか迷っちゃうね?」

ね、アリババくん――
そうアラジンが尋ねると、アリババは1つの穴に向かって走っていく。




アリババ「行くぞ二人共!この穴からだっ!」

アラジン「えぇ――っ!? そんな適当なの〜!?」

気分が高ぶったアリババは、その穴に躊躇なく足を踏み入れた。



『ちょっとは落ち着けよ、アリバカ野郎』
襟を引っ張られ、そのままアリババは尻餅を付く。


アリババ「何すんだよ!!」

『何すんじゃねーだろ。何の為に俺が居るんだよ』

今日何度目かわからない溜め息を吐き、キリフォードはアリババを立ち上がらせる。


『あんたが今入ろうとした穴からは、大量の腐った死体の匂いしかしねぇ。その他の穴からもな…』

キリフォードの言葉に唾を飲む二人に、彼は言う。


『たった1つを除いてな』

その穴の前に立ち、キリフォードは口角を上げて見せる。
それを見た二人は顔を見合わせたかと思うと、瞳を輝かせキリフォードに飛び付いて来た。



『おおっ!? 何だよッ!?』


アリババ「ありがとうなキリ〜っっ!お前が居てくれて助かったぜ!」

アラジン「凄いよキリくーん!」


二人分の体重を受け止めつつ、キリフォードは突如真剣な表情を見せる。



『まだ喜ぶな。正しい道が安全なんて事はまずねぇ。正解だからこそ、待ち受ける罠も死と隣合わせになってる筈だ』

途端に二人は表情を強張らせた…が、


アリババ「お前が居れば大丈夫だろ!」


『は!?』


アラジン「そうだよ!その為にキリくんが居るんでしょ?」


『いやいや!俺が言いてぇのは心の持ち方……』



アラジン「キリくんが居るから」

アリババ「キリが居るし」

「「大丈夫さ・だ!!」」


なんだか頭が痛くなってきたキリフォードであった。



*****



アリババ「結構進んだけど、今のところ罠らしきものはねーなー」

アラジン「さすがキリくんが選んだだけはあるね!」

先程選んだ道を進む中、未だに罠のような仕掛けは見当たらない。


アリババ「それにしても、ここ洞窟なのに明るいよな?」

『――コケ…。コケに似た匂いがそこら中からするな』


アラジン「あ、本当だ!キリくんの言う通り、壁に生えた黄色いコケがピカピカ光っているんだよ!」

アラジンが見つけた不思議なコケに、アリババも目を輝かせる。


アラジン「あっ!ねぇあのお部屋はもっと光っているよ!?」

アリババ「おっ!?覗いてみっか!?」


『おいっ!俺より先に進むなっての!』
その部屋に向かって駆け出す二人に、キリフォードも急いで追い掛けた。






アリババ「おお〜〜〜〜…。
な・な・なんじゃこりゃーー!」

部屋に入ると、先に着いていた二人が、光輝く謎の玉に感動しているところだった。


アラジン「虹色に輝いているよ。なんだかいい匂いもするし……」

きっと新種の果物だよ!
と嬉々と言うアラジン。

確かに、とても甘く理性も奪われそうないい匂いだ。
鼻の良いキリフォードは、アラジン以上にそれを感じ、その匂いに酔いしれていた。



アリババ「いいやっ、この輝き!!未知の宝石っていう線もありうるぜ!!」
アリババはそれを「レインボーオパール」と名付け、気を高ぶらせる。


【迷宮】の話をアラジンが振り、アリババがなんか良い話をし始めると、アラジンは近くにあった玉に走っていく。


同時に、キリフォードは匂いに対して疑問を覚えていた。

確かにいい匂いだと思う。しかし、この甘い匂い…何かに似ているような……。

そして玉の形を有るものに連想した時、謎が全て解決し、これが何なのか知る。


この誘われるような匂いは“フェロモン”のそれだ。
餌となるものを引き寄せる罠。
要するにこの「レインボーオパール」は宝石でも果物でもない。
虫などの、あれだ。



『アリババ離れろ!これは虫の“卵”だ!』

真っ先にアリババにそう叫ぶと、彼は冷や汗を大量にかき、振り向いた。


アリババ「も…もう遅ぇよ…」


アリババくん…

微かに聞こえるアラジンの声。
辿ってみると彼はアリの化け物に頭から食べられていた。

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