マギ長編

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「フン、白々しいわ、気に食わん小僧共め…。貴様らが1000金貨の借金を返せなかった時に、どうしてやろうか、もう決めてあるんだぞ…?」

聞きたいのか…?と訊てくるブーデルに、アリババは鼓動を早める。



「奴隷にしてやる」


アリババ「!」(ビクッ!!)

『あ゙あ゙っ!?』
キリフォードは瞳を赤くした。



「奴隷にして…、生涯…一生!ワシ自らの手で痛め続けてやるッ!」

いつの間にやら、奴隷の少女はブーデルの用心棒らしき二人に連れられ、ブーデルの下に。


そして彼女の髪や手を引っ張っては厭らしい笑みを浮かべる。


「奴隷はツラいぞ〜、ん〜!?
こ〜んな事をされても、文句は言えんからなァ〜!!」


アリババ「や…やめ…ろ…ょ…」


「ハハッ、文句あんならスカッと言ってみろコラァ――!!」

ハハハハハハハハハ――


『その汚ねぇ手を放せや……』

その距離僅か数センチ。
ブーデルの目と鼻の先には、瞳孔を開き、真っ赤に染まったキリフォードの瞳があった。


彼はブーデルの腕を握り、ギリギリと力を込めていく。


「ヒッ!は、放せっ!おいっ、コイツを引っ剥がせ!」

命を受けた用心棒が、キリフォードの肩を掴んだ。がしかし…


「くっ!!? ビクともしねぇ!?」

「どうなってやがる…!!」


「おぉい!は、早くしろ!早くしないとワシの腕が――」

『へし折ってやるよ……』

メキメキ…と背筋が寒くなる音が大きくなりかけた刹那




アリババ「ま、待てッ!!」

『―――ぅ!!』
ガクリとキリフォードが膝を付いた。


『ぉ…ぃ、アリババッ!』
キリフォードがアリババを睨む。


アリババ「も、戻って来いッ!」

『ぅ…っ』
抵抗するように、しかし確実に後ろ歩きでアリババの下に戻って行く。



アリババ「は…ハンドッ!」

『……ぅ』
所謂“お手”のように、跪いたキリフォードはアリババが差し出した掌に手を乗せた。



『アリ…ババっ!』
この状況で辱めでしかないこの行為に、キリフォードは顔を真っ赤に染める。



「ふ…フハハハハハハ!何と言う姿だ貴様!まるで躾の成っとらん駄犬のようだなァ!」


『あ゙あ゙?』
なんとも不格好なポーズで、人を殺せそうな視線をブーデルに向けた。

一瞬怯むが、ブーデルは尚も笑い続ける。



――ヒュンッ!
風を切る音がし、次の瞬間ブーデルが悲鳴を上げた。


アラジンが金属の笛で、奴の脛を殴ったのだ。



アラジン「おじさんってどうしてそうなの!? お酒やお金なんかの為に人を嫌な気持ちにさせて…」




アラジン「アリババくん達はおじさんなんかの奴隷にならないよーだ。僕、おじさんみたいな人、だ〜〜いっ嫌いっ!」

可愛らしくベーと舌を出しブーデルを小馬鹿にすると、ブーデルは顔を真っ赤にし、叫んだ。




「おまわりさーん!奴隷ドロボウでーーす!!!とってもとっても悪い、奴隷ドロボウが三人いまーす!!」


ドタドタドタドタ…

「旦那様の奴隷に手を出すか!!」

間を置かずして、大量の町警吏が姿を現した。


アリババ「わっ…警吏を呼びやがった――!」
三人は脱兎の如く走り出す。


アリババ「捕まったら俺達の人生ここでゲームオーバーだ!!」

必死に走るアリババに、キリフォードが更に悪い情報を与えた。


『……前方からも、多くの足音がするな』

アリババ「マジかよっ!!」

アラジン「すーー…」

アラジンが咄嗟に笛を取り出した。するとキリフォードがそれを手で制する。


『俺に任せろ…。あと、昨日言えなかった部分の話をここで見せてやる』


アリババ「っ…キリッ!!」

『お任せを――!!』

突然キリフォードはバク転し、アラジン達と距離を取ったかと思えば、警吏達の大軍に呑まれてしまった。


アラジン「キリフォードくん――!」

アリババ「大丈夫だっ!!」


「ぐわっ」「うっ!」「ぎゃっ!」
警吏達は悲鳴と共に宙に舞っていく。そしてその警吏達を押し退け現れたのは――



アラジン「く…黒いオオカミっ!!?」

黒狼は赤い目をギラつかせ、真っ直ぐアリババ達の方に襲い掛かって来る。


アラジン「お、追い付かれちゃう!――ウーゴく」

――アラジン、安心しろ


アラジン「え――」
アラジンが驚いていると、黒狼はアラジンの襟をくわえ、アリババも黒狼に跨がった。

二人が乗った事により、黒狼は更にスピードを上げる。


アリババ「アラジン、こっちへ移れ!」
アリババが伸ばした手を掴み、アラジンも黒狼の背中に乗る。


前方の角からも警吏達が走って向かって来た。


アラジン「ぶ…ぶつかっちゃう!」

咄嗟にアリババはアラジンを低姿勢にさせると、浮遊感がやって来た。


うっすら目を開けると、更に目を開く事になった。


アラジン「え、えぇぇ!」

なんと黒狼は建物の壁を軽々とかけ登り、屋根づたいに走っていた。



遥か後方でブーデルが何やら叫んでいたが、余りの速度で最早彼らの耳に届く事は叶わなかった。


*****




アラジン「おまわりさん達、もう見えないね」

速度を徐々に落としていく黒狼に乗り、二人は【迷宮】の近くまでやって来た。


黒狼から降りたアリババは黒狼の頭を撫でてやる。
気持ち良さそうに身を寄せる黒狼から降り、アラジンは不思議そうに尋ねる。


アラジン「ねぇ、アリババくん。このオオカミは一体何なんだい?」

アリババ「キリだよ」

アラジン「えっ!?」

「ほら」とアラジンの視線を促すと、黒狼は見るみる人の形になっていき、やがて青年の姿になった。




アラジン「ぇ、ぇぇええっ!!」

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