マギ長編

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歴史上【それ】が初めて確認されたのは、およそ14年前の事であった。


海底から突如現れた、謎の巨塔、それこそが…第1の【迷宮】であった。



多くの人々が塔を恐れた。
そんな中、科学者達は歓喜に打ち震えた。

直ちに調査団が結成、帝国も軍隊を投入し、そして人々は期待に満ちていた――…


が、しかし…二千人の調査団、一万人の重装歩兵団、全滅。
誰一人として、帰ってくる者はいなかった。


やがて塔は、「死の穴」として恐れられるように…
塔へ立ち向かう者がいなくなろうとしていた…その頃、


閉ざされていた扉より現れしは…、輝く財宝と蒼い巨人を従えた、一人の少年の姿





『――ってのが【第1の迷宮】と、それを完全攻略した少年の話さ』


アリババ「【少年】はそのまま王様になっちまったんだぜ〜!
いいよな〜、スッゲ〜よな〜、憧れるよな〜!」


アリババ達の話に、アラジンは瞳を輝かし、胸を踊らせた。



『よっし!ボチボチ行くか?アリババ』

アリババ「ああ」



一同は身仕度をし、アリババの家から出る。



アラジン「僕らがこれから行くのも、その【第1の迷宮の塔】なのかいっ?」


アリババ「いや、俺らが行くのは別の【迷宮】さ」


アラジン「別の?」

アリババ「そう、別の」

――というのも…とアリババは【迷宮】は攻略した途端、跡形もなく消える事を説明する。



『けど、まだまだ【迷宮】は世界中に出現し続けてて、攻略されてねー【迷宮】が数多く存在すんだ』


アラジン「へー。よかったねぇ、まだ誰も攻略してないのがいっぱい残ってて」


アリババ「…それがそうも言えねぇんだ」


アリババ達が向かっている【迷宮】は、【10年前に出現した迷宮】であった。

それが意味するものとは、10年もの間、誰も攻略出来ず、つまり挑戦者が皆死んでいるという事。


アラジンの顔色が真剣さを帯び、息を飲む。


アラジン「命懸けなんだね…!」

アリババ「怖じ気づいたか?」

アラジン「ううん、僕行くよ!」

アリババ「本当か?」


『……おーい、着いたぜ』


アリババ「険しい旅だぞ!」

アラジン「いいよ!」


『おーい。だから着いたぞー』


アリババ「困難な冒険だぞ!」

アラジン「いいよ!僕どんな大海原へも大山脈へもついて行く!!」


アリババ「よーーっし、行くかーっ!!!」


『着いたっつてんだろがァッ!!』


ペシッ!ベシッ!


アラジン「ぅう…痛ぁ…」

アリババ「……ぁおお…」

叩かれた脳天から煙を立ち上らせ、二人は唸る。


『…おら、着いたぞ』
クイッと顎を使い、視線を促す。

アラジンは視線を上げ、前を見て大口を開ける。


目の前には、神殿のような造りをした、神々しい建物、【第7の迷宮】があった。
通称「死への階段」である。


しかしアラジンはまずその事よりも、アリババの家からの近さに驚愕した。


『ははっ!わざわざこの為だけに、あの物件を選んだようなモンだぜ?』

アリババ「キリ…」


『え、いや。悪りぃ…』

アリババ「いや、そんな事より…、大丈夫だよな?俺……。お前も居るし、アラジンだって…」


『おいおい、ここまで来て“無し”はねぇぜ?アリババ』


アラジン「そうだよ、アリババくん。怖がらないでよ」

アラジンが「死への階段」に足を掛け、振り返った。




アラジン「これは“し”への階段なんかじゃないよ…」

――君の夢へと、つながる道だよ!



不思議と、アラジンの言葉は人々を勇気づけ、新たなる道へと導くようだ。

アリババの表情も一変し「死への階段」を駆け上って行く。


アリババ「よーし、行くぞっっ!!」

二人が階段を上っていく中、キリフォードはそれを見守るだけで、上ろうとはしなかった。

と言うのも、

ダッダッダッダッダッダッ

アリババが引き返して来るのを知っているから。



アラジン「なんで戻るの!!?」

アリババ「すぐ行くとは言ってないだろ!」

不満そうなアラジンを宥めるように、キリフォードが言う。



『まぁ、攻略の可能性を上げる為に、まず準備がいるんだよ。だからアラジンも買い物に行こうぜ?』


アラジン「え〜…」


『うまい飯も買ってやっからよ』

アラジン「うん、わかったよ!」


『はは、行こうぜ!』


アラジン「うん!」


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