マギ長編

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『俺は【魔狼牙(マロウガ)】って言う戦闘が得意な一族なんだ』


アラジン「へー、だからキリくんは強いんだね」


『まぁな。んで、俺はガキの頃からすげぇ悪ガキでよぉ。ガキ大将張ってたんだ。そん頃はいつも大人達に怒られまくってた!』

犬歯を覗かせ、笑って見せるキリフォードにアラジンもクスクス笑って聞いていた。




『ちなみに、魔狼牙には自慢できる事が2つある』

ピッと指を2本、アラジンの目の前に立てて見せる。



『1つ、これは他の民族にもあるが、五感が優れてる事』


アラジン「だから、僕やアリババくんの匂いが分かるんだね」


『で、2つ。俺たち魔狼牙は、かの狩猟民族ファナリスをも凌駕する―――』




アリババ「おーーい!アラジン、キリーー!」


遠くの方から、アリババが呼ぶ声が聞こえて来る。

その声は徐々に近付いて来て、やがて自分達の前で肩で息をし始めた。



アリババ「び…びっくりするだろ!後ろを見たら居ねぇって、どんな嫌がらせだよッ!新手のイジメかと思ったぞ!」


『いや〜、あんたの鈍さもつくづくすげぇわな』


アラジン「フフ、ごめんよ。アリババくん」

キリフォードとアラジンの態度に、アリババは腑に落ちないようで、まだ拗ねている。



『まぁまぁ、アリババ。仲直りと【迷宮】への活気付けに、うまい飯でも食いに行こうぜ?』


大通りの方に親指を向けて促すと、アリババの目の色が変わる。


アリババ「仲直りって事なら、キリが奢るんだよな…?」


『ケチババか!……まぁいいか。いいぜ、お兄さんがいくらでも払ってやるよ』



アリババ「よし!じゃぁ――」




















『で、ここでいいのかよ…。アラジンも居るんだぞ?』


アリババ「アラジンも居るから、だ!」


アリババ達は、娼婦達が働く所謂キャバクラの前に居た。



アリババ「うまい飯もあり、きれいなお姉さんも居る!一度来てみたかったんだよ!」


『へーへー。本音が漏れてるぜ、旦那…。はぁ、まぁ良いけどよ。ただ、俺に当たんなよ?』

意味不明なセリフを残し、キリフォードは中に足を踏み入れた。









アリババ「で、何この状況」





「キャ〜〜!!キリフォード様〜っ!」

「お久しぶりです〜っ!」

「また、いらして下さったんですね〜っ!」


店で働く女性という女性がキリフォードが来店した途端、黄色い悲鳴を上げ、我先にとキリフォードを迎えた。



「またお酒を飲みに来てくれたんですか〜!」

『ああ、その節はありがとうな。けど今日は連れが居るし、酒は程々にしとくわ』

空いていた席に通されると、自然と女性が周りに集まって来た。



アリババ「なぁ、お前ここの常連だったりするのか…!??」

『いや。初めて給金貰った日に、たまたま入っただけだ』


「キリフォード様〜っ!」
キャハハ、フフフ…


アリババ「……それにしたって」
徐々にアリババの目が濁っていく。



アラジン「お姉さーん、僕とも遊んでおくれよ〜」


『あー、俺のことはいいから、他の客さんの相手をしてやってくれよ』

キツい言い方にならぬよう気を付け、キリフォードが笑って見せると、女性達の更なる悲鳴が上がった。


アリババ「………」

『あー…、じゃあエリザベスを頼むわ』

キリフォードは近くに居たボーイにその名を告げると、かしこまりました!と言ってボーイは奥へ向かった。



アリババ「エリザベス…って誰だ?」

『この店一番の実力派ホステスの女だ。酌もうまいし、聞き上手な良い女だぜ』

女性に不自由していないキリフォードが珍しく女性を指名したものだから、アリババはその女性に興味を持った。


『あと声も良いし、こう…体もしっかりしてるぜ?』

ここまで彼が絶賛するので、アリババは切り出す。


アリババ「俺、その子に相手してもらいてぇ!代わってくれ、キリ!」

するとキリフォードは目を見開いたが、承諾する。


『けどアリババがエリザベスとねー。あんたの相手が務まるかどうか……』

キリフォードは酒に口をつけると、手を振り上げた。


『おー、エリザベス!久し振りだなぁ!』

アリババ「え、どこどこ!!」

アリババはエリザベスと聞き、立ち上がった。


「――お待たせ致しました…」

声のした方向を向いたアリババは、固まる。


巨木を思わせる体。
高い、なんて範囲で収まらない程の鼻。
そして周りの女性とは別次元の顔。


アリババ「え…えーっとエリザベスは……?」


「…エリザベスは私です」
その口がその名を刻む。


アリババ「あ…あ…」


『悪りぃアリババ、ちょっと手洗い行ってくるわ』

キリフォードに尋ねようとしたが、彼はトイレに席を立ってしまった。







キリフォードが戻った時には、なぜかアリババの全身に口紅と痣が刻まれていたという。

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