マギ長編

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アラジンは宝物を見つけたように目を輝かせ言った。


そんなアラジンに対して、アリババの頭の中は疑問符で埋め尽くされている。


そんなアリババの状態に拍車を掛けるように、背後の戸が乱暴に叩かれた。



「アリババ!!」

その声を聞いたアリババは慌てて戸に向かった。


アリババ「やべぇ、社長だ!」


アラジン「しゃちょう?」

アラジンが首を傾げる。


『アリババの働いてる先の経営主で、要するに金をくれる偉い人だな』


アラジン「へーー」








「アリババ!お前、なんてことしてくれたんだ!」


アリババ「いやぁ…」

ちらりとキリフォードを見るアリババ。


「先方は使った分の弁償代金他、慰謝料に1000金貨って言ってきてるぞ!」


『おー、こりゃまた』

アリババ「…その事ですが、後で相談しようと思ってたんスけど…」


「お…おい…、笑ってる場合じゃねぇぞ……」


社長は眉を寄せて、諭すような口調で言った。


「…お前…、奴隷にされるぞ」

アリババ「ど、奴隷?」

その単語に、キリフォードは片眉を上げた。



さらに社長は続ける。


「ブドウ酒の納品先はな…かの悪名高いこの町の領主だったんだよ。奴は、奴隷をいたぶり苦しめて楽しむ変態野郎なんだ…」


『おい、ちょっと待て。確かに酒は使っちまった。でもそれは俺が活躍したお陰で、一つ分しか使ってねぇはずだろ!?
なんでアリババが奴隷にされなきゃなんねーだよっ!』


「その件に関してはこう聞いている。――領主に届く筈だった酒を一つでも使ったという事は、盗賊の蛮行と同等。その身を一生捧げ続ける事で等価を得る…」


ガッチャーン!!


『ふざけやがってッ!』

キリフォードは近くにあった水差しを踏みつけると、そう呟いた。

「うちの会社もどうなるか…」



アリババ「…大丈夫だ、キリ」

アリババは社長に向き直ると、手を差し出した。


アリババ「大丈夫です、社長。奴隷になんかさせません」

社長は戸惑いつつアリババの手を掴んだ。



アリババ「俺、【迷宮攻略】で成功して、弁償代金でもなんでも払いますから!」


「はぁ!?」


アリババ「大丈夫ですって、キリも居ますし、それに…。おい、アラジン」


アラジン「?」


アリババ「お前、さっき【迷宮攻略】行きたいって言ってたよな」


アラジン「う、うん…」


アリババは口角を上げると、アラジンを指差す。



アリババ「連れてってやるよ!
その代わりにお前のジンを、社長に見せてやってくれ!」


アラジン「……うん!」

アラジンが笛を吹くと、ムクムクとウーゴくんが姿を現す。


屋根を突き破る程のその巨体を見た社長は、腰を抜かし、口をパクパクと開閉している。



アリババ「社長……こいつの名は…アラジンです。
彼は偉大なる大魔術師であり…、そして俺の一番の―――っ」


キリフォードは先程と打って変わり、口角を上げてそれを見守る。アラジンも期待を込めた視線で次の言葉を待っていた。




アリババ「俺の一番の――家来だ!!」


途端キリフォードはずっこけ、アラジンは固まってしまった。




****



アリババ「や〜〜!社長驚いてたな〜っ!」

上機嫌なアラジンとは正反対に、アラジンは肩を落とし、トボトボと後ろをついて来ていた。


そんなアリババを軽く小突くと、キリフォードは言う。


『アリババ…、さっきのはナシババだぞ?ありゃねーって!』


アリババ「ナシバ…?何がだ?」


『家来って何だよ!? あんた“友達だろっ”て言ってなかったか!?』


アリババ「それにしても、あの人にゃ世話になってるから、絶対不幸にはさせねーぜ!」


『話聞けやっ!』

――駄目だ…完全に浮かれてやがる…。


溜め息を吐くと、後ろを振り返る。

自分達に大分遅れた所で、アラジンは拗ねていた。




『アラジン…』

アラジン「お兄さん…僕はあのお兄さんの【家来】なんだね…」


『あー、あれはただの見栄っつーか…、ああ、見栄だな』

キリフォードはアラジンの目の高さに屈むと、アラジンの頭を撫でる。


アラジン「見栄…?どうして分かるんだい?」


『そりゃあ…、俺だってアラジンみてぇな部下が居たら鼻が高いしな』


アラジン「鼻が高いって…?」

『“誇らしい”って意味だ』


柔らかい笑みを浮かべたキリフォードに、アラジンは徐々に笑顔を取り戻していく。



『けど、俺はアラジンの上司じゃねー。【友達】だ』

これが決め手となり、アラジンは元気を取り戻した。


アラジン「うん、うん!!」




****


アラジン「……お兄さんと大分離れちゃったねぇ」


『心配ねぇって。俺の鼻が有りゃ、すぐに後を追える』

にこりとアラジンに笑いかけると、近くにあった樽の上に座る。



アラジン「お兄さんはすごいんだね。強いし、優しいし、ちょっと怖い時もあるけど、ハンサムだし…」


『おいおい、褒めても何も出ねぇ…って、さっきの林檎があったわ』

食うか?とアラジンに問うと、アラジンも隣に座り、林檎にかじりついた。



『俺が優しいねぇ…。あの人に会うまで、その言葉を言われた事はなかったな…』


アラジン「ねぇ、キリフォードくん」


『ん…キリで良いぜ』


アラジン「キリくん。僕、君の事が知りたいな」


『お前も直球だな…。いいぜ、俺の事、色々教えてやるよ』

そしてキリフォードはアラジンに語り出す。

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