マギ長編

□6
1ページ/1ページ



「娘をありがとうございます…!」

母親の女性は頭を下げ、アリババ達にお礼を述べる。




「俺たちの馬車もおかげで助かったしよ」

「使っちまったブドウ酒の弁償代は、みんなで手分けして払えばなんとかなるしよ!」


他の運転手たちも礼を述べ、酒の件もなんとかなりそうであった。


アリババ「ありがとう…。でもよー、俺だって覚悟決めて飛び出したんだぜ……。金は、また働いて返すさ…」

もう一度ありがとうな、と言ったアリババだったが、内心は穏やかではないようだ。



『……俺がその気になりゃ、稼げなくもねー額だぜ?』

キリフォードは首を傾げアリババに提案する。


アリババ「使っちまったのは俺だ。だから俺が払うのは当然だろ?」


『…無理しちゃって。あんたそう言うとこ、変に律儀だよな』



アリババ「……ところで、さっきからお前、何やってんだよ?」


アラジン「うん、それが出ないんだよ…」


アラジンは先程からずっと笛を吹き続けている。


『…出ない?って笛の音がか?』


プピッ
アラジン「あっ、出たぁ!」

『お、よかったじゃ ね か…』


キリフォードが長身を屈め、覗き込んだが、みるみる顔を引きつらせていく。

アラジンの笛から、ニュルニュルと青い何かが出てきた。


それは形を成していくと、男の筋肉質な腕になった。


一同は固まり、口を揃えて叫んだ。



ギャーーーッ!!


****



「うわーーっ!蛇だーーっ!」

運転手、乗客、子供から大人までもが悲鳴を上げながら逃げる中、アリババだけは“それ”を見据えていた。



『なあ、アリババ…。あれって、お前が教えてくれたやつか…?』

キリフォードは口元を引きつらせ、アリババに問う。



アリババ「あぁ…あれは伝説の…」

――ジンの金属器!!










太陽が地平線に沈み、この街【チーシャン】の市場が活気に溢れる頃、三人はヤキトリを食べながら歩いていた。



アラジン「いやー、助かったよお兄さんが泊めてくれるなんて!」


アリババ「当たり前だろ〜〜」

楽しげ(?)に会話をする二人を、キリフォードは3歩後ろを歩きながら眺めていた。



アリババ「命をかけて同じ敵と戦ったんだ、持て成させてくれよ」

アリババの少し違和感な笑みに、キリフォードの表情筋が崩壊寸前である。



アリババ「もう友達だろっ?アラジン!」

するとアラジンは頬を染め、クルリとキリフォードを見上げた。


アラジン「お兄さんも、友達…?」

するとキリフォードは目を細め、柔らかに微笑む。



『ああ、友達だな』

返事をしてやると、アラジンはとても嬉しそうにはにかむ。


アラジン「うんっ!」

****


アラジン「わ〜〜。僕、友達のお家って初めてだよ」


アリババ「そうか?」


『んじゃ、俺は茶でも淹れてくっか』


アリババ「まあ、アラジン座れよ。今買ってきた林檎も切ってやっからな?」


アラジン「わ〜〜!おいしそうだねぇ!フフフ…」


キリフォードがお茶を運んできたのを見計らい、アリババは尋ねた。


アラジン「ところでよー、俺、聞きてーことあんだけどさー……」


アラジン「なんだい?」



アリババ「その笛って……何?」

『直球だな、おい…』

アリババが剥いた林檎をかじりながら横槍を入れるキリフォードを無視し、アリババはアラジンに詰め寄った。


アラジン「こ…これかい?ただの…笛だけど…」

アリババの剣幕に気圧されたアラジンは、少し戸惑ったように答えた。


しかしアリババの求めた回答ではなかった為、アリババは必死に尋ねる。

するとそれが【ウーゴくん】というジンであることが分かった。


ジンの金属器という事実が分かってから、アリババの目の色が変わる。


アリババ「で、どこで拾ったんだ?やっぱ【迷宮】か?」


アラジン「ダ、ダンジョン?」


アリババ「昨日、説明したじゃねーか!」


再び迷宮に関する説明を始めたアリババ。
しかし今度はアラジンもちゃんと聞いている。


そして【ジンの金属器】という単語を聞いたアラジンは、大きく反応する。


アラジン「それだよ、それ!!」

アリババ「おお?」

アラジン「僕はその【ジンの金属器】を探していたところなんだよ!」


『…その笛とは違うのか?』


アラジン「これは違うよ。【迷宮】じゃなくて、部屋からでた時に拾った物だから」


アリババは「部屋?」と首を傾げるアリババに対し、キリフォードはアラジンの頭に鼻を近づける。


『……確かに、地上では嗅いだことのねぇ匂いだな…』


アラジン「お兄さんわかるのかい?」


『まあ…うっすらとな。あとはお日様の匂いがする』


アラジン「うん、というのも、僕とウーゴくんは…、昔からずっと【地下の頑丈な部屋】に居たんだ」

さらにアラジンは続ける。
そこは外へ出られない事。だが、ちょっと前にやっと外へ出られた事。
その他、ウーゴくんと言うジンは首から上は出られない事。


アリババ、キリフォードからすればチンプンカンプンな話だ。




アラジン「ねぇ、【迷宮】に【ジンの金属器】があるんだよね!?」


『あ…あぁ、間違いないと思うぜ?』

するとアラジンはスクッと立ち上がり、アリババらを見下ろす。


アラジン「じゃあさ!僕をそこへ案内しておくれよ!」

_

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ