マギ長編
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「娘をありがとうございます…!」
母親の女性は頭を下げ、アリババ達にお礼を述べる。
「俺たちの馬車もおかげで助かったしよ」
「使っちまったブドウ酒の弁償代は、みんなで手分けして払えばなんとかなるしよ!」
他の運転手たちも礼を述べ、酒の件もなんとかなりそうであった。
アリババ「ありがとう…。でもよー、俺だって覚悟決めて飛び出したんだぜ……。金は、また働いて返すさ…」
もう一度ありがとうな、と言ったアリババだったが、内心は穏やかではないようだ。
『……俺がその気になりゃ、稼げなくもねー額だぜ?』
キリフォードは首を傾げアリババに提案する。
アリババ「使っちまったのは俺だ。だから俺が払うのは当然だろ?」
『…無理しちゃって。あんたそう言うとこ、変に律儀だよな』
アリババ「……ところで、さっきからお前、何やってんだよ?」
アラジン「うん、それが出ないんだよ…」
アラジンは先程からずっと笛を吹き続けている。
『…出ない?って笛の音がか?』
プピッ
アラジン「あっ、出たぁ!」
『お、よかったじゃ ね か…』
キリフォードが長身を屈め、覗き込んだが、みるみる顔を引きつらせていく。
アラジンの笛から、ニュルニュルと青い何かが出てきた。
それは形を成していくと、男の筋肉質な腕になった。
一同は固まり、口を揃えて叫んだ。
ギャーーーッ!!
****
「うわーーっ!蛇だーーっ!」
運転手、乗客、子供から大人までもが悲鳴を上げながら逃げる中、アリババだけは“それ”を見据えていた。
『なあ、アリババ…。あれって、お前が教えてくれたやつか…?』
キリフォードは口元を引きつらせ、アリババに問う。
アリババ「あぁ…あれは伝説の…」
――ジンの金属器!!
太陽が地平線に沈み、この街【チーシャン】の市場が活気に溢れる頃、三人はヤキトリを食べながら歩いていた。
アラジン「いやー、助かったよお兄さんが泊めてくれるなんて!」
アリババ「当たり前だろ〜〜」
楽しげ(?)に会話をする二人を、キリフォードは3歩後ろを歩きながら眺めていた。
アリババ「命をかけて同じ敵と戦ったんだ、持て成させてくれよ」
アリババの少し違和感な笑みに、キリフォードの表情筋が崩壊寸前である。
アリババ「もう友達だろっ?アラジン!」
するとアラジンは頬を染め、クルリとキリフォードを見上げた。
アラジン「お兄さんも、友達…?」
するとキリフォードは目を細め、柔らかに微笑む。
『ああ、友達だな』
返事をしてやると、アラジンはとても嬉しそうにはにかむ。
アラジン「うんっ!」
****
アラジン「わ〜〜。僕、友達のお家って初めてだよ」
アリババ「そうか?」
『んじゃ、俺は茶でも淹れてくっか』
アリババ「まあ、アラジン座れよ。今買ってきた林檎も切ってやっからな?」
アラジン「わ〜〜!おいしそうだねぇ!フフフ…」
キリフォードがお茶を運んできたのを見計らい、アリババは尋ねた。
アラジン「ところでよー、俺、聞きてーことあんだけどさー……」
アラジン「なんだい?」
アリババ「その笛って……何?」
『直球だな、おい…』
アリババが剥いた林檎をかじりながら横槍を入れるキリフォードを無視し、アリババはアラジンに詰め寄った。
アラジン「こ…これかい?ただの…笛だけど…」
アリババの剣幕に気圧されたアラジンは、少し戸惑ったように答えた。
しかしアリババの求めた回答ではなかった為、アリババは必死に尋ねる。
するとそれが【ウーゴくん】というジンであることが分かった。
ジンの金属器という事実が分かってから、アリババの目の色が変わる。
アリババ「で、どこで拾ったんだ?やっぱ【迷宮】か?」
アラジン「ダ、ダンジョン?」
アリババ「昨日、説明したじゃねーか!」
再び迷宮に関する説明を始めたアリババ。
しかし今度はアラジンもちゃんと聞いている。
そして【ジンの金属器】という単語を聞いたアラジンは、大きく反応する。
アラジン「それだよ、それ!!」
アリババ「おお?」
アラジン「僕はその【ジンの金属器】を探していたところなんだよ!」
『…その笛とは違うのか?』
アラジン「これは違うよ。【迷宮】じゃなくて、部屋からでた時に拾った物だから」
アリババは「部屋?」と首を傾げるアリババに対し、キリフォードはアラジンの頭に鼻を近づける。
『……確かに、地上では嗅いだことのねぇ匂いだな…』
アラジン「お兄さんわかるのかい?」
『まあ…うっすらとな。あとはお日様の匂いがする』
アラジン「うん、というのも、僕とウーゴくんは…、昔からずっと【地下の頑丈な部屋】に居たんだ」
さらにアラジンは続ける。
そこは外へ出られない事。だが、ちょっと前にやっと外へ出られた事。
その他、ウーゴくんと言うジンは首から上は出られない事。
アリババ、キリフォードからすればチンプンカンプンな話だ。
アラジン「ねぇ、【迷宮】に【ジンの金属器】があるんだよね!?」
『あ…あぁ、間違いないと思うぜ?』
するとアラジンはスクッと立ち上がり、アリババらを見下ろす。
アラジン「じゃあさ!僕をそこへ案内しておくれよ!」
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