マギ長編
□5
1ページ/1ページ
「アリババ!!」
砂漠ヒヤシンスが触手でアリババの体を捕らえ、アリババは血相を一変する。
キェ〜〜〜〜ッ!!
アリババ「酒が足りてねぇ…!!
――くそぉーーっ!!」
アリババは短剣を取り出し、触手を払っていく。しかし、死角から伸びてきた触手に頭を殴られ、アリババは意識が遠退いていく。
アリババ「こんなところで…死んで…たま る か…」
皆の悲鳴で、アリババの声がかき消されそうになる。
『しかと承ったぜ…アリババ』
しかしキリフォードにはしっかり聞き取れたようだ。
隣では、アラジンが頭に巻いていたターバンを取り、上に乗る。
『アラジン、俺も連れてけ!』
キリフォードはアラジンが広げたターバンに乗り込んだ。アラジンは一瞬目を見開いたが、すぐに頷いた。
アラジン「飛べっ、魔法のターバン!!」
****
アリババ『まったくダンナ様の仰しゃる通りで!』
あ――、ヘコヘコするばっかりで結局、何も成せないまま…
やだなぁ俺…、本当にネズミの価値のまま死ぬのは…
――諦めないでよ、お兄さん!
薄れる意識をかき集め、アリババは声のした方向を見上げる。
『おーいアリババ。言うなら心の中で言えや。全部聞こえてるぜ?』
そこ…つまり上空には、大量の酒樽を乗せたターバンと、それに乗るアラジンとキリフォードがいた。
周りはそれに叫声を上げるが、アリババはキョトンとアラジンを見上げる。
アラジン「お兄さん、嘘ついたの?」
アラジンはにこりと笑う。
アラジン「お金でもお酒でも買えないもの、もっと僕に教えてよ!」
『良い事言うねぇ…。じゃ、こっからは俺の仕事と言う事で…』
キリフォードは軽くストレッチをすると、後ろの酒樽を見る。
そしてブーデルを見ると、今までに見た事が無いくらい慌てていた。
『おいブタ豪農っ!感謝しな、てめぇの酒は使わずにいてやる!』
それを聞いたブーデルは再び憎たらしい表情を浮かべた。
「フン、当然だ!その運転手のガキ300人よりも高いんだぞ!ワシの酒の価値の方がよっぽど上だ!」
『あと…』
途端、空気が不気味に凍る。
『【油虫も殺せない】って嘘をついたお詫びに見せてやるよ。
――俺の本当の実力をな』
そう言い残すと、キリフォードはヒヤシンスに向かって落ちていった。
「ワァァァァァッ!キリの奴が早まった!!」
「キリフォードーーっ!」
アラジン「お兄さーんっ!」
全員がキリフォードの行動に悲鳴を上げたが、当の本人は血迷ってはいなかった。
ただヒヤシンス一点を見据えていた。
『――我が主に対する愚行、あの世で後悔しろ』
地を這うような低い声を出し、キリフォードはヒヤシンスの口の中へと飛び込んだ。
見る者全てが言葉を失い、彼の死を確信した。その時
バシュュュュッ!
爆発にも似た音を立て、ヒヤシンスが破裂した。
中から無傷のキリフォードが出てきた事に、周りも歓声を上げた。
アリババ「うわああぁぁ――!」
上空から落下して来るアリババを、キリフォードは地を蹴り、見事キャッチした。
『よぉアリババ。生きてるぜ、良かったな?』
アリババ「はは…逆に寿命が縮まった」
アリババに茶々を入れるキリフォードはいつもの彼であった。
そしてブーデルのすぐ横に着地すれば、ガタガタと震えるブーデルの姿。
『俺の本当の実力は…如何でしたかな、ブーデルサマ…?』
全く笑わないキリフォードに見据えられたブーデルは恐怖が限界を越え、気絶するように倒れた。
_