マギ長編

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「アリババ!!」

砂漠ヒヤシンスが触手でアリババの体を捕らえ、アリババは血相を一変する。



キェ〜〜〜〜ッ!!


アリババ「酒が足りてねぇ…!!
――くそぉーーっ!!」

アリババは短剣を取り出し、触手を払っていく。しかし、死角から伸びてきた触手に頭を殴られ、アリババは意識が遠退いていく。



アリババ「こんなところで…死んで…たま る か…」


皆の悲鳴で、アリババの声がかき消されそうになる。


『しかと承ったぜ…アリババ』

しかしキリフォードにはしっかり聞き取れたようだ。


隣では、アラジンが頭に巻いていたターバンを取り、上に乗る。


『アラジン、俺も連れてけ!』

キリフォードはアラジンが広げたターバンに乗り込んだ。アラジンは一瞬目を見開いたが、すぐに頷いた。



アラジン「飛べっ、魔法のターバン!!」



****



アリババ『まったくダンナ様の仰しゃる通りで!』



あ――、ヘコヘコするばっかりで結局、何も成せないまま…


やだなぁ俺…、本当にネズミの価値のまま死ぬのは…


――諦めないでよ、お兄さん!


薄れる意識をかき集め、アリババは声のした方向を見上げる。



『おーいアリババ。言うなら心の中で言えや。全部聞こえてるぜ?』


そこ…つまり上空には、大量の酒樽を乗せたターバンと、それに乗るアラジンとキリフォードがいた。


周りはそれに叫声を上げるが、アリババはキョトンとアラジンを見上げる。



アラジン「お兄さん、嘘ついたの?」
アラジンはにこりと笑う。


アラジン「お金でもお酒でも買えないもの、もっと僕に教えてよ!」



『良い事言うねぇ…。じゃ、こっからは俺の仕事と言う事で…』

キリフォードは軽くストレッチをすると、後ろの酒樽を見る。

そしてブーデルを見ると、今までに見た事が無いくらい慌てていた。



『おいブタ豪農っ!感謝しな、てめぇの酒は使わずにいてやる!』


それを聞いたブーデルは再び憎たらしい表情を浮かべた。


「フン、当然だ!その運転手のガキ300人よりも高いんだぞ!ワシの酒の価値の方がよっぽど上だ!」


『あと…』

途端、空気が不気味に凍る。


『【油虫も殺せない】って嘘をついたお詫びに見せてやるよ。
――俺の本当の実力をな』


そう言い残すと、キリフォードはヒヤシンスに向かって落ちていった。



「ワァァァァァッ!キリの奴が早まった!!」

「キリフォードーーっ!」

アラジン「お兄さーんっ!」


全員がキリフォードの行動に悲鳴を上げたが、当の本人は血迷ってはいなかった。

ただヒヤシンス一点を見据えていた。





『――我が主に対する愚行、あの世で後悔しろ』

地を這うような低い声を出し、キリフォードはヒヤシンスの口の中へと飛び込んだ。


見る者全てが言葉を失い、彼の死を確信した。その時






バシュュュュッ!

爆発にも似た音を立て、ヒヤシンスが破裂した。



中から無傷のキリフォードが出てきた事に、周りも歓声を上げた。






アリババ「うわああぁぁ――!」

上空から落下して来るアリババを、キリフォードは地を蹴り、見事キャッチした。




『よぉアリババ。生きてるぜ、良かったな?』


アリババ「はは…逆に寿命が縮まった」

アリババに茶々を入れるキリフォードはいつもの彼であった。


そしてブーデルのすぐ横に着地すれば、ガタガタと震えるブーデルの姿。


『俺の本当の実力は…如何でしたかな、ブーデルサマ…?』

全く笑わないキリフォードに見据えられたブーデルは恐怖が限界を越え、気絶するように倒れた。

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