マギ長編

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アリババ「ったく…、こんなガキの所為で俺の人生設計崩されてたまるかよ…」


アラジン「人生設計?」


馬車に乗り込むアリババに、アラジンは問い掛ける。



『アリババは借金を返して、【迷宮攻略】で一発当てるんだと…』


アラジン「迷宮…?ってなんだい…?」


アリババ「はぁ?なんだ【迷宮】も知らねーのかよ」

呆れた表情を浮かべ、アリババはアラジンに説明する。



アリババ「14年前からな、世界のあちこちに見覚えのねー建物が突然出現し出したんだよ」

徐々に表情を紅潮させ始めたアリババを、キリフォードは笑みを深め、聞いていた。




アリババ「――そして、現代では考えられねー不思議な魔法アイテム!それらを世界中の奴等が探し回ってるご時世なんだ!」

アリババは嬉々と迷宮について話す。
しかしアリババは気付いていないようだが、アラジンはすでに興味を失っている。




アリババ「そこで、このアリババ様が誰よりも早く世界中の迷宮を完全攻略して、【世界一金を持ってる男】になってやるのよ!」


もはやキリフォードからすれば耳たこである。

自分の夢を打ち明けたアリババだったが、アラジンの反応はと言うと


アラジン「へー。なーんだ、そんなことなのかい」

だった。



『“そんなこと”で片付けんのは早いぜ、アラジン。金さえ有りゃ、意外と手に入るモンもある』


アラジン「へ〜、例えば?」


『まぁ…、うまい飯とか』


アラジン「おいしいごはん!?」

アリババ「おっ」

打って変わり、アラジンの良い反応が返ってきた。


アリババ「そうだよ。あと、キレーな女とかな」


アラジン「わぁ、キレイなお姉さん!」


すると火が着いたように、二人はキレイなお姉さんトークを始めた。



アリババ「金さえ有りゃ男はモテる!! でかくて柔らかい胸の女が大挙して押し寄せてくるんだ…!」


アラジン「そんなァ、ウフフ…。照れちゃうなァ…!」


気分が最高潮に達した二人に、まさかの爆弾が投下された。




『金が無くても、不思議と女は寄ってくるぜ…?』


アリババ「………」

アラジン「……そうなのかい?」

アラジンが首を傾げた反面、アリババはユラリと立ち上がり、キリフォードの前に仁王立つ。



『アリババ?』

アリババは無言でキリフォードの胸ぐらを掴んだ。


アリババ「お前…目付き悪いのに…なのに…、なんで…お前ばっかりモテるんだよっ!!

怒髪天を衝いたアリババはキリフォードを前後に揺らす。



『ちょっ、待て、酔うっ!やめろ!うぇぷ…』

徐々に顔色が悪くなっていくキリフォードを、アラジンが慌てて止めようと試みる。


するとクスッと控え目な笑い声が聞こえた。



「フフッ、楽しいわねぇ君達。
うちの娘はね、【迷宮】の不思議なお話を聞くのが大好きなんですよ」

そう言う女性に抱かれた女の子は、頬を紅潮させ、瞳を輝かせていた。


それを見たアリババとキリフォードも互いに目配せし合い、口元を緩めた。


しかし何処までも空気を読まないのがこの男だ。


「ハッ…。貧乏人が貧相な夢を見ておるなぁ…。【迷宮攻略】なんぞ、砂漠を漁るドブネズミの蛮業ではないか……」


するとピクリとキリフォードを瞳が心無しか赤く変色してきた。


「そうだろ?運転手よ」

アリババ「そうッスねー」

ブーデルは嘲笑い、なおも続ける。



「分不相応な夢を見るものではない。ネズミはネズミに生まれたからには……」

――一生ゴミクズの価値しかない人生を送るのだから…


黙り込むアリババを疑問に思ったのか、「違うのか?」と尋ねた。


アリババ「いや〜っ、まったくダンナ様の仰しゃる通りで!」

先程の愛想笑いを張り付け、アリババはつらつらと自虐的な言葉を紡いでいく。



『(馬鹿野郎…痩せ我慢バレバレだっつーの)』
だが、今はそんな事より、だ。


キリフォードはアラジン、母子を自分の腕に抱き込んだ。

アラジン「お兄さん?」

『アリババぁ!歯ぁ食いしばれッ!』


途端、馬車が勢いよく横転した。
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