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□高尾が男主に告白する話
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どーも、オレこと皆大好き高尾ちゃんでっす!
……のっけからこんな感じでごめんなー。



んで、突然なんだけど冒頭のテンションのついでに、ちょっとオレの“秘密”を話しちまおうと思う。




――オレ、高尾和成には、現在好きな人が居る。

同じ中学に通う、2つ年上の3年のセンパイ。
キレーな髪色してて、めっちゃ情に脆くて、仲の良い人にはちょっと粗暴だったりする。けどすげぇ優しい人――。


とある“いざこざ”に巻き込まれた際、オレを助けてくれたのが出逢いだった。
……もしかしたら、この時からだったのかも。いわゆる【一目惚れ】ってやつ?


その日からセンパイと一緒に居るようになって、センパイの色んな面を知って、どんどん好きになっていった。


………でも告白はしねーかな。いや、出来ない、か。
センパイもオレも、“男”だからさ。


…ビックリするよな。オレも最初すげぇ驚いた。
気の迷いっつーか、勘違いじゃねーかって色々考えたりもしたんだけどさ、なんか…そんなのどうでも良くなっちまった。

センパイと一緒に居ると、オレの全身から「好きだ」って想いが溢れてくんの。
もう、考えても無駄だと思ったね。


傍に居るだけで、オレすごく幸せなんだよね。
でも…さっき言ったように、告白は出来ねーな。
センパイ、困らせたくねーんだ。だからこの恋はオレの“秘密”



『――何独り言言ってんだ』

高「ぅえぃ!!?」

『ふは、変わった悲鳴だな』

いつの間にか後ろに立たれていたらしい。
……まだ未熟とは言え、鷹の目の視野を持ったオレが気付かないなんて、よっぽど意識が散漫してたんだな。




『…大丈夫か?』

高「何がですか?」

そう声を掛けてくるのは、オレの“秘密”の相手であるセンパイこと鳴海サン。

あーあー、すごく心配そうな表情してら。
内心そんな風に茶化してたら、オレの無防備な額に冷たいものが触れた。


高「っ!冷たっっ!!」

『悪い。けど熱がある訳じゃないんだな、……安心した』

高「っ、」

うわー、うわぁー……っ!!

どうやら額に触れたのはセンパイの冷えた手で、ベタに熱がないか計ろうとしたらしい。

で、熱がないと解ると「安心した」って言って、すっげぇ優しい表情で笑うんだよ。


さっき告白は出来ないって言ったばっかだってのに、今オレ「好きです」って口走り掛けたし…!



『けどあんまりボーとしてんなよ。見てて危なっかしいから』



立「おーすナルー、カズー」

志「おっはよーナル〜、和くん」


鳴海サンがオレの頭を軽く叩いたくらいに、センパイの親友の2人、立花サンと志波サンが登校して来た。



『珍しいじゃねーの、立花がこんな時間に登校して来るなんて』

立「ふふーん、オレだってやりゃ出来んのよ。……ところでナル宿題して来たー?」

『…写す気なのな。はぁ、そんな事だろうと思ったぜ』


呆れたような態度だけど、きっとセンパイは立花サンに宿題見してあげるんだろうなぁ。

高「……いいよなぁ…」


志「和くん、何か言った?」

志波サンがあざとく覗き込んでくる。……志波サンみたいにカワイイ系男子だったら、ちょっとは積極的になれたかも。



一度昇降口で分かれ、オレの教室の前までセンパイ達と一緒に歩く。



高「んじゃセンパイ方、また後ほど!」

ビシっと敬礼し、教室の扉に手を掛ける、―――!?



『気をつけてな』


そう言ってまた、センパイは去り際にオレの頭を撫でた。
ただそれだけ。なのに……



高「………ぅす」

小さく返事をした後、ヘナヘナとオレはその場にうずくまった。
顔が、すごく熱い。


「おーす高尾……何してんだ?」

扉の前にうずくまるオレに、クラスのヤツは怪訝そうな表情をした。


なんか、思ってたより重症かもしれねぇ…。


(隠しきれんのかな、オレ…)


HR5分前を告げる予鈴が耳の端で響いた。




――――………‥‥

――……‥







高「すんません、遅くなっちゃって!!」


大「大丈夫だよ高尾、そんなに待ってないから」

高「あっ大澤サン、ちわーす。いやーここに来る途中で主将に会って、今日体育館の整備とかで部活無しって話聞いてたんで…」


立「そう言うのはメシ食いながらで良いから、早く座れって。マッキーが“おあずけ”状態だから」

立花サンが不敵に笑うものだから、志波サンに目を向けると、ああ、なるほどね。確かに“おあずけ”をされている犬のようだ。


志「かぁぁずぅぅくぅぅぅ……」

めっちゃコッチをガン見してらっしゃるっ!


高「志波サンすんません、じゃ食いましょっか!」

オレが座ると、志波サンは目の前に置いた菓子パンたちにかぶり付いた。


高「ブフォ!志波サン、そんな急がなくてもパンは逃げませんって!」


志「ふぉなはふいぺん……」


『食いながら喋んなよ、喉詰めんぞ』

鳴海サンが呆れると同時に、志波サンがピタッと動きを止め、途端もがき出した。


大「ちょっ、マッキー!?大丈夫!!?」

大澤サンが慌てて牛乳を差し出す。
志波サンはそれを受け取ると、勢いよく流し込んでいく。


志「ぅ、はぁぁ〜、死んじゃうかと思った…」

高「大丈夫すか志波サン!つか1リットルをラッパ飲みとか、お腹大丈夫なんすか!!?」


『マッキーは1年の時からずっとコレだぞ』

志「平気だよ〜!僕、お腹壊した事だけは一度もないから〜っ!」

高「マジで!!?」

いつものように雑談しつつ、無意識に鳴海サンを覗き見る。

今日はこの冬1番の冷え込みだって、朝の天気予報で言ってたっけ。
鳴海サンは中に着込んでるらしいカーディガンの袖を引っ張り出し、指先を隠してる。つまりアレ、萌え袖ってやつ。

……なんか、すげぇカワイイ。




『何見てんだ、高尾』

高「!、いやあ…の、」

やべぇ、ガン見してた…!
何か上手い言い訳を考えるが、どうも良いのが浮かばねぇ。



『……もしかして、このコロッケか?』

高「え、……ああ!そう、そう!いやぁ、おいしそうだなぁって!それも手作りすか!?」

センパイは、オレが弁当のコロッケが欲しいのかと勘違いしたらしい。
確かに旨そうだし、ここは便乗させてもらう。


『ああ、昨日ジャガイモが安くてさ、一杯買い込んじまったからコロッケにしたんだよ』

高「そうなんすか。てか、言ってる事主婦みたいすねっっ!」

吹き出したオレの目の前に、一口大に切られたコロッケが差し出された。


『さっきおいしそう、っつてただろ?だから一口やるよ』


高「は…!!?」

オレは差し出されたコロッケを凝視した。
箸を辿れば、当然鳴海サンの細い指があって……つかコレってっ!!!


『ほら、口開けろって』

高「ちょっ、センパイ…!」



いわゆる「あーん」だよな!?


高「センパ…、あ、ほらこの袋の上に置いてくださいよ!」

咄嗟に食ってたパンの空き袋を差し出す。が、


『ほら、あーん』



高「 」

パクっ


『どう、旨い?』

高「……」

オレは無言で頷いた。
今声を出そうもんならぜってぇ漏れる…!センパイ好きです、とか言いそうになるっ!!

てかセンパイ何っ!!?わざとなの!?「あーん」とか狙って言ったの!?

あ、けどこのコロッケすごく旨い!マジで旨ぇ!



志「あ、良いなぁー。ナル〜、僕もコロッケ欲しー」

『ん、ほら…』


高「うぐっ、…ゲホッ、ゴホッ!!」


立「おいおい大丈夫かよカズ」


高「大、丈夫……です…」

え、何今の……。

今、志波サンがコロッケ欲しいって言って、鳴海サンはコロッケを差し出した。――パンの空き袋の上に乗せて……?

オレもさっき同じようにしてくれって、言った。
のにオレは直接箸で食べさせてもらった……。


え、えっ…、どういう事コレ。

こんなの、オレの都合の良いように解釈しちゃうんだけど……。





『……この部屋の暖房キツイか、高尾?』


高「そ、すね。ちょっと、暑いっす…」








ねぇ鳴海サン……










オレ、あんたの事が好きなんだよ。
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