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池に落ちた子供はカナヅチで、どんどん沈んでいった。

すると、すごく大きな影が近付いて来たんだ。
それはこの池の土地神の【鯉のぼり様】だったんだ。

子供は生まれて初めて見る鯉のぼりにお願いしたんだ。
“助けて下さい”ってさ。

でも鯉のぼりは言った。

“私の池にたくさんのゴミを捨てたのはお前か?”って。



すると子供は助かりたいあまりに嘘を吐くんだ。
“違う、僕じゃない”ってさ。

鯉のぼりは
“……そうか、なら”って言うと、口を大きく開けた。



“神殺しの上、嘘つきな貴様は悪い子だ。悪い子供は私の腹で一生反省するがいい”



……その日を境に、その子供の姿を見た人はいないんだってさ。










『ぴぁあああ!!』

木暮「これで解ったか?鯉のぼりの本当の意味」

そこで木暮はズイッと陽太に顔を近付ける。


木暮「陽太も悪い子供だったら、その子供みたいに鯉のぼりに喰われちゃうよ〜?うしし…」

『ボク…いい子にしますぅ…、だから…たべないでくだしゃい…』
瞳を揺らし、陽太は空で優雅に泳ぐ鯉のぼりを見上げた。


ギロリ…!

『ぴっっ……!』

刹那、鯉のぼりの目が動き、こちらを鋭く睨んだ


……ように見えた。



―――---……‥




不動「――おい陽太。もう鯉のぼりは良いのか?」

『ぁぃ…』

不動「なんかあった訳?」

『ないでしゅ…』

不動「泣いてるみてぇだけど」

『ダイジョーブ…でしゅ…』

不動「つか何で引っ付いてんの?」

『……いい子に…しましゅ』


不動「いやそういう問題じゃねーけど…」


宿舎に入って早々、不動にコアラ状態で引っ付いてきた陽太。



不動「はぁ…」
溜め息を吐きつつ、不動は陽太を引っ付けたまま広間にやって来た。





不動「なぁ、どいつか事情知らねー?」

不動の声に、メンバー達が反応する。


風丸「……陽太どうしたんだ?」

不動「聞いても何も言わねーし、誰か知らねーの?」

皆が首を横に振る。
若干木暮が顔を青ざめさせた。


木暮(なんか…大事になってきたっぽい!!?)



基山「陽太くん。柏餅まだあるけど、食べるかい?」

基山が柏餅を持ってあやすが、陽太は首を横に振る。


『ボクのぶん…もうたべちゃいましたから…』

基山「余った分だから、気にしなくて良いんだよ」

ほら、と柏餅を差し出す基山の手をソッと掴むと、柏餅を受け取る。


不動のかいた胡座の中でちびちびと柏餅を食べていると、トイレに行っていた壁山が戻ってきた。






壁山「無いッスーーー!!!」

壁山が大きな声で叫ぶ。


円堂「無いって…何がだ?壁山」

壁山「キャ、キャプテン!このお皿に置いといた最後の柏餅、知らないッスかー!」

ざわざわっと辺りがどよめき出した。


壁山「最後の1個、楽しみにとっておいたんッス!」

涙目で訴えてくる後輩に、円堂は頬をかきながら基山に目配せをした。
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