give&take

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――雷門中体育館。

本日ここには、多くの選手達が響木によって集められていた。

監督が居ないこの体育館で、選手達は各々の時間を過ごしていた。


しばらくして、響木が姿を現すと、皆彼の元に集まった。


円堂「監督!」


響木「皆、揃ってるか?」


昴「すみません、遅れました!」
響木がぐるりと一同を見回す。
すると、警官の人に連れられ、遅れて登場した神風昴が体育館に入ってきた。


響木「やっと来たか…」
それを確認した響木は溜め息まじりに呟いた。


昴(……ん?)
円堂や基山と言葉を交わしていた昴の視界の端に、何ともこの場に似つかわしくない幼児の姿が映った。


すると、鬼道に向かって鋭いシュートが飛んできた。


鬼道「――!」
鬼道は研ぎ澄まされた運動神経でボールを蹴り返す。

戻っていくボールを目で追うと、それをトラップし足下に戻す人影が。
すると、幼児こと陽太の表情が明るくなった。


佐久「不動っ!」
佐久間がその人物の名前を呼べば、彼は人を食ったような笑みを浮かべた。



不動「挨拶だよ、アイサツ…。洒落のわかんねーヤツ…」


佐久「響木さん!まさかあいつも――」

鬼道「っ、陽太!?」

佐久間が抗議をすると同時に、鬼道が声を上げた。
釣られて選手達は陽太の方を見ると、陽太は喜々とした表情で不動の下へと駆け寄っていく。



陽太がピョンと跳ねると、不動の腕の中に収まる。
その光景を見た多くの選手は唖然とした。
しかし昴だけは、何処か探るような眼差しで二人を見ていた。


不動「ったく、勝手にウロチョロしてんじゃねーよ!捜すこっちの身を考えろ!」

そう言って陽太の小さな額にデコピンを喰らわせた。



『“ごめんなさい”』

不動「ったく…」

先程まで選手達に向けていた表情とは一変。不動は安心したような表情で陽太を見詰めた。


多くの者が理解出来ていない中、一区切りが付いたところで響木が口を開く。




響木「これで全員揃ったな…いいか、よく聞け!お前達は日本代表候補の強化選手だ!」


円堂「日本代表?いったい何の?」

響木はFFIについて説明し、盛り上がる一同。しかし昴だけは、真剣な面持ちで思慮に更けていた。


響木「いいか。あくまでこの23人は候補だ、この中から17人に絞り込む」


そう言ってそれぞれのチーム訳が発表された訳だが…――





昴「よろしくね、守くん」

円堂「え?名前…」

昴「仲間は名前で呼ぶことにしてるんだ。選考試合、一緒に頑張ろう」

円堂「はい!」

昴含むAチームは上手く行きそうな反面、鬼道率いるBチームは、不動の悪態によって険悪ムードが立ち込めていた。


不動の発言にキツく返した佐久間の言葉に、不動のズボンを握っていた陽太が驚き、涙ぐんでしまう。


不動「ハッ、ダッセェ…。何子供泣かせてんだよ。つーかさぁ、ご不満のようだけど、オレだって響木カントクから認められてここに来たんだよ…」


鬼道「……解っている」

不動の皮肉な言い回しに、鬼道は苦虫を噛み潰したような表情で答えた。


彼の態度に満足したのか、不動はぐずる陽太を連れて出口へ向かった。




昴「あ…ねぇ、君」
唐突に昴は陽太を呼び止めた。


昴「金平糖だよ。……彼と一緒にお食べ?」

陽太は人の良さそうな笑みを浮かべ金平糖を渡してきた昴と、掌に収まる包みを交互に見遣って、怖ず怖ずとスケッチブックに文字を綴った。


陽太「“ありがとうございます”」


昴「よく出来ました、…どういたしまして」
優しく陽太のくせっ毛を撫でると、昴は皆の元に戻っていった。

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