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□第六話
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斉藤「……本当に、帰って来るかしら」
小柴「大丈夫、彼らを信じましょう。――あ、ほら。帰って来ました」
小柴が視線を向けた先には、弥谷、不動、そしてヨウタの姿が見えた。
弥谷「ほらガキンチョ、まずする事があんだろ?」
弥谷がヨウタの背中を押すと、ヨウタは俯きながら前に出た。
そして恐る恐る視線を上げ、ペコリと頭を下げた。
“ごめんなさい”と気持ちを込めて…。
するとヨウタの小さな体がフワリと引き寄せられた。
斉藤に抱き締められたようだ。
斉藤「お帰りなさい、ヨウタ君」
小柴「お帰り」
斉藤と小柴は優しげな笑みでヨウタを迎えた。
弥谷「…水差すようで悪いんスけど、怒ったり…しないんスか?」
弥谷の素っ頓狂な言葉に二人は顔を見合せ、ニコリと微笑んだ。
斉藤「実は、君達とヨウタ君が一緒に居る事を知ってたんです」
小柴「ヨウタ君が公園で君とサッカーをしていた所を見つけてね。その後に温泉街の中継に、君達とヨウタ君が映っていたんだよ」
弥谷「マジで!俺らテレビに映ってたのか!」
不動「オレ達が一緒だったから…なんて、不用心だろうが」
弥谷がテレビに映れた事に興奮する傍ら、不動は鋭い目つきで斉藤達を見た。
斉藤「確かに…、子供の君達と一緒でも安心なんて言えない。でも、こちらからしたら、君達…あなたと一緒なら、ヨウタ君は安心出来るんです」
小柴「大方の事情は、この施設のシステムを知っていれば予想がつくと思うけど、この子は少し複雑なものが絡んでいるんだ」
弥谷が首を傾げる中、不動は「やっぱりな…」と納得する。
不動「こいつには、親が居ねーんだな?」
弥谷が不動の台詞を聞いて叫声を上げる。
この歳で“親が居ない”だけでも複雑な事情だと思うが、これ以上の干渉は柄ではないと不動は口をつぐむ。
弥谷「こいつ結構いいヤツなのに、なんで親が居ないだよ!」
斉藤「ごめんなさい…、これ以上の事は守秘義務も関係するから、訊かないで下さい」
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