□第一話
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この日、灰色の曇天が愛媛の空を覆っていた。
やがて雲から一粒、また一粒と雨粒達が降り、此処、埠頭の地面にシミを作った。



雨は次第に強くなり、やがて土砂降りになった。





――ぅぇえぇえん…!!



土砂降りの中、一つの泣き声がする。



埠頭の隅に属する古びた倉庫の屋根の下に一人の女性が傘も差さずに立って居た。

その腕には、まだ生まれて一年も満たないであろう幼児を抱いていた。







――ぅえええぇん……!

泣きじゃくる幼児に目も向けず、女性は有ろう事か、幼児を無惨にもそこにあった箱の中へと入れ、そのまま立ち去ったのだ。


少なからず持ち合わせて居た罪悪感か、自分が濡れるのも構わず、幼児に傘を差し置いて行った。



――まって……!いかないで!
……ボクをひとりぼっちにしないで…!
ねぇ、おかあさんっ!おかあさん!……おかあ…さんっ…――




幼児は心で叫んだ…。
何度も、何度も……。

母には届きもしない、小さく、弱々しい、心の中でしか繋げない言葉で――…。






―――---……‥














――ねぇ、おかあさん……?
ここは…つめたいよ…。さみしいよ…。

ボクをなんでここにおいてったの? ねぇ…、おかあさん……





















警察官「――ゃ…。坊や!大丈夫か!?」



『……………』

警察官「これは酷い…。一体、何日此処に放置されたんだ…」


『…………』

警察官「すぐに交番に連れてってあげるからな」

幼児は警察官に抱えられ、ひとまず交番へと連れて行かれた。










後に始まった母親の捜索。

幼児を保護してから、一ヶ月かかり、やっとの思いで母親を遠く離れた他県で見つけ、育児放棄の疑いで逮捕に至った。


そして母親の取り調べで、その女性は子を産んだ親とは思えない自白をした。














警察官「……やぁ、こんにちは」



施設の女性)
「こんにちは、ご苦労様です」


警察官「……あの子は…?」

施設の女性)
「…今はお昼寝の時間なので。それで、お母さんは……」

警察官は首を横に振った。

施設の女性)
「……あの子、本当に可哀相に。まさか、母親がそんな事…」


警察官「はい…本当に……」







『―――………』





―――---……‥

――--…‥









施設の女性)
「皆、起きてー。お昼寝終了〜」

眠い目を擦りながら渋々起きる子。
まだ眠り足りないのかモゾモゾと布団に潜る子など、様々な反応をする子供達。


施設の女性)
「……? 皆、ヨウタ君は?」

【ヨウタ】それは母親が最初で最後にあの子に与えたものだった。


子供1「ヨウタくん、どっかいっちゃったのー」

子供2「うんー。だれよりも早くおきてねー、ピューってどっかいっちゃった」


施設の女性)
「どこかって……まさかっ!」





――――---……‥




近日、台風が来ると予想されおり、埠頭の様子は、海が荒れ、大きく波立っていた。

そんな埠頭に、小さな影一つ。
その影は、埠頭の隅の倉庫の下に居た。




―――おかあ……さん。
……ボクはここだよ?ずっと、ずっと、いい子でまってるんだよ?
ねぇ、はやく・・・・・・
    ……むかえにきて?






――――---……‥

――--…‥




――3年後…。

つい一ヶ月前、この愛媛には異常な事が起きていた。
正しくは、日本で異常な事が起こっていた。
宇宙人、【エイリア学園】の侵略計画。

しかし、
雷門中の選手を中心に結成された、“地上最強のサッカーチーム”によって、吉良星二郎また、研崎の野望は阻止され、再び世界に静けさと平和が戻ったのだ。





?)「……チッ。つまんねーの…」

そう悪態を吐くのは、一ヶ月前、影山の下で真帝国学園チームのキャプテンを務めて居た、不動明王だ。


不動「影山のヤツ…、このオレを二流品だと…?
――…ふざけんじゃねぇ…!」


不動は足元に転がっていた空き缶を、思いっ切り蹴った。

見事、クズかごに入り、それを目撃した者は拍手をしていた。


不動「チッ…」




――ガサ…っ

不動)「!?」

突然、後ろの方でから物音がし、不動は振り向いた。


『………』

不動「……ガキ?」
そこに居たのは紛れも無い子供。しかし、ただの子供とは思えなかった。


何故なら、歳を言うなら三、四歳。
活発かつ、やんちゃで無邪気さが余る頃と言える歳にも関わらず、その子供は立って歩かず、ハイハイをするようにしていたのだ。


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