舞蝶

□部章
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冬獅郎の部屋に着いた。
やはり隊長の部屋は他の私のような席官の部屋よりもかなり広い。
卯ノ花さんの言うとおり2人で過ごすなら冬獅郎の部屋での方が良さそうだが、問題はもっと根本的な所だ。



『なんで2人でじゃないと許可されないの…!?』
「お前が無茶しそうだからだ」
『しないわよ』
「そんなに俺と暮らすのが嫌か?」
『違うっ…そうじゃなくって!』
「じゃあどうだってンだよ」



冬獅郎が私の荷物を降ろしながら言う。
何故か冬獅郎の寝室に…。
あえてつっこまないんだから…!
つっこんでなんか……。



「まだ完全に治ったわけじゃないんだ。大人しく俺に看病されてろ」
『…は〜い』



冬獅郎がじっとこちらを見ている。
なんだろうか。



『何?』
「紅蓮亜、お前…」
『…何?』
「家事できるか?」



私の前に正座しながら真顔で何を言い出すかと思ったら…。
つられて正座になってしまった。




『何でそんなこと聞くの?』
「いや、暫く仕事は休みだろ?」
『休まないわよ。3番隊は隊長がいなくなって副隊長が重傷、その上3席が休むわけにはいかないじゃない』
「吉良よりお前の方が重傷だ」
『どこがよぉ…』
「胃、小腸等の内臓の爆散および腹部に位置する骨の粉砕骨折それから『休みます。ごめんなさい』分かればいいんだよ」
『…それで?』
「一日中ここにいることになる訳だから」
『夕飯作って待ってるよ。あ、お風呂が先派?』
「…っ!!いゃ、飯が先…で、よろしく///」



急に顔を赤くする冬獅郎。
え、何で?



『どうしたの冬獅郎…??』
「いや…その、なんか…俺たち、」
『…?』
「夫婦…みたいだな//」
『へ…な、何言ってんのっ!!?』



二人そろって赤面しながらしばしの沈黙。
向かい合っているのが何となく気恥ずかしくてお互いに俯いたまま時間が過ぎる。
そっと目線だけ上げて冬獅郎を見るとバッチリ目があった。
するとそのまま冬獅郎の顔が近づいてきて…。


『…っ///』
「…///」



そっと触れるだけのキス。
先ほどとは違ってゆったりとした時間が流れる。
実際はそんなに経っていなかったのだけど、私にはそう感じた。
ジッとしていると急に体に負荷がかかる。
冬獅郎の匂いが私を包む。



『冬獅郎…?』
「ん?」
『…ううん、なんでもない』



もう少しこのまま…。




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