おはなし

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鬱蒼と繁った森の入り口。
今まで見てきた森と変わらないようにも見えるが、大きく違うのは花の量だった。


沢山の種類、色とりどりの花が咲き乱れている。



「なるほど…親指姫…」

「ナゴミ?」

「ん、いや……私の知ってる親指姫は、花から生まれるのよ」

「そう、それです!」


アリスが声をあげて立ち止まった。
数歩遅れて和も止まる。


「どうしたの?どれ?」

「ナゴミは、マリアのお母様が持っているのが毒林檎だと知っていました」

「うん」

「今回は、親指姫が花から生まれたという情報を持っていました」

「いや、それがこっちで当てはまるかは微妙な所だけど」

「それらは全て、どうやって知ったのですか?」


純粋な疑問から来る質問のところ悪いが、
どうやって知ったと言われると説明に困るものだ。


人に聞いた?違う気がする。
絵本で読んだ?と、言ってその後どう説明しようか…


「うーん……」

「あっ…すいませんナゴミ、困らせてしまって」

「いや、寧ろ答えられなくてゴメン…あ、じゃあもとの世界の都合って思ってもらえれば」

「はい、わかりました」


答えになっていない気もするが、アリスはこくりと頷いた。

良い子すぎる。
感動すると同時に不安になった。
彼女のこの性格はやはり問題があるのではないだろうか。



「きゃっ…」


小さな悲鳴を聞いて、和は意識を戻した。

アリスが花に捕まって…


「アリス!!!!」


少し申し訳なく思いながら、彼女に絡む蔦を引きちぎった。


しかし次から次へと蔦が絡む。
ダメだ。和は咄嗟にアリスを抱え込んだ。


喉を締め上げられる。
空気がうまく確保できない。
アリスが名前を呼んでいる気がする。









「や……やめて!みんな、やめて」



か細い声がした途端、首の蔦が緩んだ。
急に空気が取り込まれ思わずむせ返る。



「ナゴミ」


アリスを宥めてから、声の方を見た。


淡い青のドレスを着た少女が、ポツンと立っていた。
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