おはなし

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「可愛い子ね。

これから、親指姫と呼びましょう。」



声は言った。
優しい、優しい声で。



わたしは、そっと目を開けた。
光が目に刺さって眩しい。


目がなれてくると、光のなかに優しげな女の人がいるのがわかった。
目元に上品な皺が刻まれている。



わたしの口は、自然とその人を呼んだ。




「……おかあさん。」














「……ミ、ナゴミ、ナゴミ!」


「っん…」


ゆっくり重い瞼を上げた。
すっかり見慣れた顔が覗き込んでいる。


「アリス…ごめん、寝ちゃった」

「いいえ。問題ありません」


ニコリと何時ものように微笑んだ。
心がふわりと軽くなる気がする。


「夢見てた…」

「夢……ですか?」

「うん……多分あれ、親指姫だ」


そう。
たしかに、声がそういった。


「……会いに来てほしいのかも知れませんね」


「親指姫が?」


「ええ」


悪意の欠片もない笑顔を見せる。
彼女がハートの女王とやらに狙われているという事実が信じられなかった。




「じゃ、すぐに会いに行ってあげなきゃね」



和はアリスに負けないくらいに微笑んだ。
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