おはなし

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「親指姫の居る森、って何処でしょうか?」



食事をするために入った食堂で店員に聞いてみたら、苦笑いで知らないと返された。



「どうしようか……」

「聞いたことがあります。親指姫は、人前に出ることが滅多にないと」


なるほど。引きこもりならば情報がないのは仕方ない。

でもどうしろと。

そして何故帽子屋とやらは親指姫の所に着けたのか。


「…ナゴミ、とりあえず、ご飯食べましょう?」

「…仕方ないね、うん。
いただきますっ」

「いただきます」












「とりあえず森探したらなんとかなるでしょうか?」

「えっ、いや、アリス、私たちがもと来た場所も森だよ?迷うよ?」


「そ、そうでした……」



街外れまで来たが何一つ手がかりは無かった。

このままでは帽子屋と入れ違いになるのではないだろうか。


一度マリアの所に戻ろうか。
彼女は知らなかったらしいが、彼女の家族なら知っているのではないか。



『お困りかしら。』



二人同時に顔をあげた。
そして、驚いた。口調から想像していたよりもずっと幼い少女が目の前に居た。


「貴女は?」
「……迷子、でしょうか」

彼女の眉が不機嫌そうに寄せられる。


『違いますわ。何?知らなくてよろしいの?』


「え、な、何を?」

『アリス。ナゴミ。貴女方は、親指姫の森に行きたいのでしょう?』


「っ。名前、なんで」

「それに、どうしてそれを……」


『私は、貴女方の事を知ってしますわ。全て。
行きたいのでしょう?親指姫の森』


少女はあどけなさの残る顔に妖しい笑みを貼り付けていった。


「……貴女は、誰なの?
どうして、此処に来たばかりの、私のことも知っているの?」


『――不幸だったわね。ナゴミ。
怖かったでしょう?』



思わず息を飲んだ。
どうして、彼女は、自分の事を。
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