おはなし

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『白は嫌いよ。』



ステンドグラスに手を滑らせて、赤い髪の彼女は言った。


彼女の持った鎌の先が床に当たって、カツン、と冷たい音がした。


『存じています。』


『だから、貴方も嫌いよ、時計ウサギ。』



ステンドグラスから目を離さないで言った。
彼女はこちらを見る気はないらしい。



『光栄です』


『……何?』



目だけが此方を向く。
赤い瞳が自分を射抜く。


『貴女様に何かしらの関心を持って頂けているのは、とても光栄です』



『…………ふ、ふふ』




広い部屋に彼女の高笑いが響いた。
肩が小刻みに震える。




『やはり、お前は面白いわ…時計ウサギ。

お前のそういった所は嫌いではないわ。』




そうして、彼女はようやく此方を向いた。




『ねえ、時計ウサギ。


アリスは何処に居るの?』



妖しい笑みに対して、白ウサギも笑みで返す。





『申し訳ございません、女王様。
それだけは、教えられない決まりですので』




スッ、と目を細めた。
彼女の瞳に更に妖しい光が灯る。



『釣れないわねえ。』



冷たい、冷たい声だった。
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