おはなし
□1
1ページ/3ページ
『白は嫌いよ。』
ステンドグラスに手を滑らせて、赤い髪の彼女は言った。
彼女の持った鎌の先が床に当たって、カツン、と冷たい音がした。
『存じています。』
『だから、貴方も嫌いよ、時計ウサギ。』
ステンドグラスから目を離さないで言った。
彼女はこちらを見る気はないらしい。
『光栄です』
『……何?』
目だけが此方を向く。
赤い瞳が自分を射抜く。
『貴女様に何かしらの関心を持って頂けているのは、とても光栄です』
『…………ふ、ふふ』
広い部屋に彼女の高笑いが響いた。
肩が小刻みに震える。
『やはり、お前は面白いわ…時計ウサギ。
お前のそういった所は嫌いではないわ。』
そうして、彼女はようやく此方を向いた。
『ねえ、時計ウサギ。
アリスは何処に居るの?』
妖しい笑みに対して、白ウサギも笑みで返す。
『申し訳ございません、女王様。
それだけは、教えられない決まりですので』
スッ、と目を細めた。
彼女の瞳に更に妖しい光が灯る。
『釣れないわねえ。』
冷たい、冷たい声だった。