おはなし
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「マリアさん、スペアさん、入りますよ?」
声をかけてから扉を開いたら、スペアが口に人指し指をあて「シーっ」と言った。
ふと目を向けると、マリアがベッドに突っ伏して眠り込んでいる。
「どうやら一晩看病してくれたらしい…オレが目を覚ますのと同時くらいにようやく眠ったんだ」
小声でいう彼は、本当に幸せそうな目をしていた。
忘れそうだが彼は前日に刺されている。
「本当に幸せそうですね…」
「悪いか?」
「いや、だって貴方昨日その人の母親に刺されて死にかけてるんですよ?」
「マリアを守って死ねるならそれはそれで本望だよ」
「…………」
聞いているこっちが恥ずかしくなってきた為、これ以上追求するのをやめた。
「そうだ。お母様はどうなった?」
「あっ、そう、それです」
それを話しに来たんです、と言葉を続けた。
「彼女数分前に目を覚ましたんですが、ここ数日の事を覚えていなかったんです」
「!」
「それで逆にそのことを問い詰められて、アリスが全部説明したら、」
「泣いて謝られちゃいました…」
「アリス!」
声のする方を見たら、アリスが申し訳なさそうにこちらを覗いているところだった。
ひとつ会釈をして入ってくる。
「継母はどうなったの?」
「たった今、お帰りになりました」
「帰ったのか?」
「ええ」
アリスはふわりと微笑んだ。
話しによれば散々謝ったあと、城に戻ってから何かお詫びをする事を約束して帰っていったらしい。