おはなし
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被った布の奥、継母の目が見開かれていくのがわかった。
ナイフを持つ手が震えている。
その手と同じ震える声を絞り出すように言った。
『え?あ、やだ、なあに、それ、白雪、ねぇ、うそ、嘘よねえ』
マリアはしっかりと彼女の目を見返した。
継母の目に怯えや動揺の色が滲んでいく。
『あ、うそ、いやよしらゆき、貴女は、貴女は私の、』
カタカタと、どんどん彼女の震えが大きくなる。
両手でナイフを握りしめ、一歩、また一歩と近付いてくる。
『あぁ、ああ、貴女は、もう、私を、あなた、貴女なんかっ、ああああぁぁ!』
勢い良くナイフが振り上げられる。不味い、もう足が動かない。
マリアが和を庇うように、彼女をしっかり抱き締めた。
先の展開を考え、和は強く目を瞑った。
ドスッ、という鈍い音をきっかけに、一瞬泉から音が消えた。
次いで男性のものらしき呻き声が、静寂を破る。
男性。
二人を庇うようにそこに居たのは――――