おはなし

□4
2ページ/5ページ

「ここ!此処だっ」

「えっ、」


声を受けてゆっくりと止まった。
開けていて、更に涼しい。


「っ…は、はぁっ、わぁ、すごっ、きれっ…は、」

「…大丈夫か?」

「な、なん、で、マリアさ、息、きれてな、はぁっ、」


荒い息を整えると、改めて辺りを見回した。

澄んだ泉がまるで鏡のように月や星を写している。
回りの静けさと相まって、神秘的な美しさを放っていた。



「すごい…」

『白雪、白雪。』


泉に見入っていたら、声が聞こえた。
弾かれたように振り向く。
闇の奥から、黒い影が現れた。

彼女の持つナイフが月明かりを受けて妖しく光る。


『あぁ、白雪!』

「……お母様。」


マリアが少し前に出た。
制止する意味も兼ねて和がマリアの手を握る。


「お話しすることがあります」

『なぁに、白雪』



「…私は、貴女に感謝しています。

本当の母ではないのに、ここまで育てていただいて、その上愛していただいて。
私も、貴女を母として、心からお慕いしています。

でも」


彼女が深く息を吸うのがわかった。

握った手に力がこもる。マリアは微かに震えていた。


「私、私は…



貴女のものには、なれません」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ