おはなし
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何となく嫌な予感がした。
白雪姫の話はどんなのだった?
魔女が姫に会いに来て、それで、それから
『こんばんは。白雪はいるかしら?』
少し怒りを含んだ声を、扉の向こうの人物は発した。
両手をきつく握りしめる。
「あっ……あの、ど、どちら様ですか?」
乾いた唇を湿らせる。
声はまた言った。
『こんばんは。白雪はいるかしら?
林檎を持ってきたのだけど』
思わず内側で固まる。
苦笑いが自然と口から漏れた。
林檎はまずいんじゃ…
後ろでは異変を察知したらしい小人たちが息を殺して様子を見ていた。
『ねぇ、開けていただけないのなら、無理矢理開けますよ、構いませんね』
一層棘のある声で言った。
そして次の瞬間、扉が溶ける音がした。
「!? ちょっ、待っ!!」
確かに、木製の扉が煙をあげながらどろどろと溶けている。
思わず飛び退くとそれを待っていたかのように扉が開け放たれた。
『あぁ、こんばんは。
白雪に会いに来たのよ』
黒い布を纏った女性は、妖しい笑みを浮かべる。
すぐに小人たちの間に動揺が広がった。
「いや、まさか」「そんな、」「うそだ、うそだ」「彼女は、」「魔女じゃない」「そうだ確か、」「彼女は、マリアの、」
「―――お母様。」
掠れた小さな声が背後から聞こえた。
反射的に振り替えるとそこには、呆然と立ち尽くすマリアと彼女を止めようとするアリスがいた。
ただでさえ白い白雪の肌が血の気が引き色を失っている。
「まっ、マリアさん出てきちゃ駄目です!」
『あぁ、会いたかったわ、白雪。私のいとおしい娘。
見て、林檎を持ってきたの。食べて』
彼女の様子など気にもせず、マリアの母は林檎を差し出した。
見た目は、とても美味しそうな……
「駄目です!それを食べちゃ!
それは毒だから、食べれば死んでしまうから!」