おはなし
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寝室からはまだ二人とも帰ってこない。
気になって気になって、思わず扉へ近寄り、ドアノブに手をかけたり耳を近付けたりしてみたが、小人の白い目線に耐えかねてやめた。
心配しなくても何も聞いてはいないし見てもいない。
椅子に座ってしまえば本当にやることがなくなり、それはそれで落ち着かないもので。
少しそわそわした後、小人に声をかけた。
「ね、ねぇ、何か私にやることって…ない?」
「いいよ、いいよ」「ナゴミはお客さんだからね」「座っていて」「僕らがやるからさ」
一斉に言われてしまえば言い返すこともできなくなり、立ち上がりかけた椅子にまた腰を下ろした。
残っていた家事は次々と片付けられていった。
流石と言える手際のよさである。
(……これは手伝った方が仕事増やしてたかも)
余計なことをしなくてよかったと寧ろ安堵していたら、
『こんばんは。』
外から、声が聞こえた。
少し低め、綺麗なアルトの女性の声だった。
ちらりと小人たちに目をやるが、生憎誰も手を離すことができそうもない。
『こんばんは。』
外の声がもう一度言った。
「は、はい、ただいま…っ」
こればかりは自分がやるしかあるまい。
そう考え、椅子に突っ掛かりながらも立ち上がって扉に向かった。
しかし、ドアノブに手をかけたところで、
彼女の手が自然と止まった。