おはなし
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「ハートの女王って誰?」
純粋な疑問から訪ねると、二人の顔が急に曇った。
アリスが固く唇を噛み締める。
「…彼女は、ある日急に現れた"不思議の国"の女王なんだ」
マリアが小さく呟いた。
それから少しずつ、言葉を紡いでいく。
「赤いドレスに身を包んだ綺麗な女性。
ただし、彼女はとても冷酷で残酷。
気に入らないことがあるとすぐに首をはねる癖がある」
「え……」
ただ聞いているだけだったアリスが、突然顔を手で覆い床に膝をついた。
「ごめんなさい。
私が彼女を此処に連れてきてしまったんです。
ごめんなさい。
ごめんなさい。」
何度も謝罪を繰り返すアリスに和はどう声を掛けていいかわからなくなり、
しかしただ反射的に、彼女の手を取った。
「っ……」
「わ、私はまだ来たばかりだから何とも言えないけど
きっとアリスが謝ることはないよ。
大丈夫、きっとアリスはなにも悪くないよ」
微かに目に涙を浮かべていたアリスは、和の言葉に少し驚いた後、
また花の咲くように笑った。
「ありがとう…ナゴミ」