おはなし
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部屋の外に出ると、マリアが見えた。
ただ下を見て、どうしたものかと固まっている。
「マリア?」
「…ああ、アリス、ナゴミ…
どうやら私は勘違いをしていたらしい」
彼女の足下には、男性が転がっていた。
「痛っ…マリア、もう少し手当ては優しくしてくれ」
「うるさいストーカー名前で呼ぶな」
彼はスペアというらしい。
一度マリアを見てから一目惚れし、それからずっと彼女を訪ねて来ている、という事だ。
こんなのでも、一応王子である。
「ったく…何度も何度も…こっちは常に命を狙われてただでさえ気が立ってるというのに」
「悪かったって…」
はい、おしまい!と手当てを終えたマリアはスペアを叩いた。
彼が痛みに顔を歪める。
「そうだ、白雪」
包帯を擦りながら、マリアに目を向けた。
その目はいつになく真剣で、彼女は顔をそらした。
「気を付けろ、お前の城で不穏な動きがあるらしい」
「え…」
「不穏な動き、ですか」
固まったマリアの代わりにアリスが言葉を繋いだ。
こくりとスペアが頷く。
「詳しくは分からないが、とにかく、お前を見つけろ、という命令がでたらしい」
「…………」
マリアは黙ったままだ。
心なしか、顔色も悪い気がする。
「マリアさん……」
和が心配して声を掛けようとしたら、パンッ、と手を打ってマリアが立ち上がった。