おはなし

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「また懲りずに…」

怒りを含んだ声音で言うとマリアは早足で玄関へと向かった。

「マリアさん…」

「もしかして、また魔女さんが?」

「…魔女?」

魔女?
なんだ、それは。

「見たように、マリアは美人さんでしょう?この辺では"白雪姫"と呼ばれているんです」

不思議そうな顔をした和に、アリスは、彼女はお姫様なんですよ、と付け加えた。


話はこういうことらしい。

――白雪姫、として名高い彼女には義母がいるが、
その義母が彼女の命を狙い、魔女に依頼をした。

今まで何度か命を取りに現れたが、マリアは返り討ちにしていた。


「返り討ち…」

「かっこいいでしょう?」
そういってアリスはくすくすと笑った。

それにしても、魔女とは。まるでお伽噺だ。
それに、白雪姫は…小さい頃読んだ童話だ。
大分、記憶とは違うが。


もしかして、
私は、あの雑貨屋の、
小さな街に来てしまった?

意識を失う間際に見た老婆の薄笑いを思い出す。



「マリア、遅いですね。」

「え、…あ、うん、たしかに。見に行ってみる?」

「そうですね、心配ですし」


二人はマリアの後を追い、部屋の外に出た。











―――その頃、
大きな城の一室。



『マリア、私の、可愛いマリア。』



彼女はただ、自分が写るだけの鏡に話しかけていた。
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