おはなし
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夜の闇のような黒髪に、陶器のように白い肌。
髪と同じの漆黒の目に、血程に赤い唇。
「…よかった。
痛い所とかは無いか、変わった服のお嬢さん?」
「ふぁ!?あ、はい!」
思わず見とれていたら急に声を掛けられて焦る。
綺麗な低い声だった。
「君はどこから来たんだ?
この辺じゃ見ない顔だ」
聞かれてはっとした。
ここは一体何処?
「あの、私、店に居た筈で」
「店?」
怪訝そうに聞き返される。
窓から見えるのは森だけだ、店など近くに無いと言いたいのかもしれない。
彼女達の姿や名前からして、恐らく現代ではないのだろう。
「……」
「もしかして、帰れないとかですか?」
「多分……」
「それは大変だ。…アリス、彼女の具合が良くなったら『白雪!』……」
マリアの言葉が終わらないうちに外から声が聴こえた。
マリアがすぐに綺麗な顔をしかめた。
『白雪!』
また外から声が聴こえた。