最遊記

□寝不足
1ページ/1ページ



「くぁ・・・」

欠伸をしながら窓の外に目を向けると、
月明かりが白い雪を一層白く輝かせていた。

先週から降り続く雪は止んでは降り止んでは降りを繰り返し、
世界を銀色に染めたままでいる。
そんな日は決まって数年前に拾った子供が自分のベッドへ潜り込んでくる。

雪への恐怖心は克服したが、決して好きにはなれないのだと悟空は言う。
檻の中で500年もの間感じた孤独はそう簡単には拭えないのだろう。

布団の中、悟空はしがみつくように三蔵の服を握りながら眠るのだ。
それを起こさないように抱きしめる。

愛しい子供が怯えさせていわけではない。
むしろその笑顔に惹かれているのだ。泣きそうな顔が見たいわけではない。
だが、抱きしめると心地よさそうに眠る悟空と共に過ごす空間が
嫌いではない。

あの子供は、自分に好意を持っている。
よく好きだといわれることもある。
だがそれは、自分が悟空に感じる好きとは違っていて、
決して恋愛感情ではないのだろう。

悟空は、実年齢とは別に、精神年齢が極めて低い。
まだ子供なのだ。恋愛感情というものをまだ理解していない。

理解する前に、自分しか見れないようにしてしまおうか。
最初から自分だけを見させて、他に目などいかないように。

だがもし、拒絶されたら―――
そんな思いが浮かんでしまう。

自分はいつからこんなに臆病になったのだろう。
今は、一晩中抱きしめていられるこの寝不足が心地いいなんて。


コンコン――


弱弱しいノック音に軽く返事をすれば、
ゆっくりとドアが開いた。

「さんぞ、一緒に寝ていい?」


嗚呼、今日も寝不足だ。






+++END+++

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ