最遊記
□兄弟
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「さんぞ〜ッッ、ごじょ〜ッッ、はっか〜いッッ」
毎日聞く声は大きな声で俺たちの名を呼んでいた。
男にしては高く、女にしては低い。
中途半端な愛しい声。
「いた。なぁな、一緒に昼メシ食おうよ」
毎日同じ面子で飯を食ってるはずなのに
毎日同じ事を聞いてくる。
「あぁ、待ってろ。八戒が職員室に行っている」
「おう悟空。今日もかわいいねぇ〜」
「ひやかすなッ///」
冷やかしなどではないことを知らないのは、
多分悟空だけだ。
「そぉいうとこも可愛いっつってんの。
ほんと、兄キにはぜーんぜん似てねぇなぁ」
「そぉか??」
「似てたまるか」
「三蔵ひでぇ!!!((泣」
そう。
悟空は俺の弟だ。
歳は1つ下で、それでも嘘なんじゃないかというくらいの身長。
俺と似たところはひとつもない。
「本当の兄弟じゃないんじゃないですか?」
「あ、八戒おかえり〜」
本当の兄弟じゃなかったら・・・
そんなことを数え切れないほど考えたことがある。
もし俺達が兄弟じゃなかったら、
この想いを悟空にぶつけるくらいは出来たのかもしれない。
「んじゃ、屋上にでも行きますか」
「そぅですね、ほら、悟空、行きますよ」
「うんっっさんぞー、はやくいこっっ」
「あぁ」
悟空は本当に昔から変わらない。
幼いときからずっと・・・。
そんな事を考えて、
そんなにも前から俺は悟空ばかり見てきたんだと苦笑する。
いっそ、出逢わなければこんな苦しみもなかったと思うときもある。
だが出逢わなかったら。
俺は・・・誰かを愛すことなど出来るはずもない。
悟空だから。
悟空だけを愛すことが出来る。
「三蔵」
俺の名前を呼ぶ、お前だけを愛す。
「・・・・・・・・・・あ」
「どうしたんですか、悟空」
「俺ちょっと用事あったんだった・・・
みんな先行っててよ」
「あぁ。いってら」
「いってきますっ」
悟空は申し訳なさそうに廊下を走った。
「最近多いですねぇ」
「あいかわらずおモテになるな、この兄弟わ」
「あ??」
「あなたも言われてるでしょう?昼休みに来てくださいとか、好きです、とか」
「言われてねぇな」
「言われてんだよッッ!!!テメェが無視するだけで!!!」
告白・・・。
悟空は誰かと付き合ったりしないのだろうか。
高校1年となったら彼女くらいいていいだろう。
「見に行ってみましょうか」
「お、いいねぇ」
「それじゃぁ、体育館裏に行きましょうかw」
「なんで場所知ってんのよ・・・」
「秘密です」
体育館裏には、悟空と、どこかで見たことのあるような女がいた。
悟空よりも背は小さく、小柄で、顔は真っ赤になっている。
「ご・・・悟空、好きですっっ付き合ってくださいっっ」
「・・・・・・・・・ごめん」
「・・・・・ッッ。・・・わかった、ごめんね」
「ううん」
悟空は首を縦には振らなかった。
そのことに酷く安心して。
何を安心してるんだと自分に言い聞かせた。
自分に可能性など少しもないのに。
何故・・・