最遊記

□彼は、溺れていく。
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そばに居て当たり前だ。
あいつは、俺のモノだから。

それは悟空も同じように思っているはずだから
あいつは俺が何を言おうと離れはしない。


ある、雨の日のことだ。
俺はいつも異常にイライラしていた。
大切な人が死んだ悲しみがいつの間にかイラつきに変わり
おさえきれないほど大きくなっていた。

「なぁ、三蔵」

いつも通りなら、何も言わなかっただろう。
雨の日は反応する力が沸かない。

「俺、三蔵のこと好きだよ」

悟空は雨の日にいつもそんな言葉を俺にぶつける。
普段はそんな事いわねぇくせに・・・

「三蔵が死んじゃったら俺も死んじゃいたくなるよ」

「・・・・・・・」

「けどね、三蔵、そんなの嫌でしょ?
だから俺は三蔵が死んでも生きるよ」

別に何も言わなくてもよかった。
体がかってに動いているような感覚。
そんなことしたくないはずなのに。

「ふざけるな」

その言葉とともに俺の手は悟空を突き飛ばした。

「・・・っっ」

「毎度毎度ウゼェんだよ」

「・・・ごめ、」

「消えろ」

「・・・・・」

「聞こえねぇのか!!消えろといっている!!」

「・・・・・・やだ」

「あ?」

「やだよ。三蔵、一人にしたくない」

その言葉に酷く怒りがこみ上げて
悟空をまた殴った。

そのあとも、何度も何度もひどい言葉を吐いて
そんなことを言いたくもないのに、
思っていることと逆の事しかいえない自分に反吐が出そうで。

雨がやむ頃には悟空の体はボロボロで
それでも悟空は最後までこの部屋にのこっていた。

「さんぞ、雨、やんだから」

「・・・・・・あぁ」

「太陽でてるよ・・・」

「・・・・・・あぁ」

「もぅ俺、消えなくていい?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

その言葉に今までにないくらいの罪悪感がこみ上げてきて
悟空を優しく抱きしめる。

「さんぞ??」

「悪かった」

「・・・・うぅん、三蔵は悪くねーじゃん」

そう優しい言葉をかけてくれる悟空に俺は溺れそうになる。


「なぁ三蔵、だいすきだよ」


笑み。
それがどれだけ俺を変えているか悟空は知らないだろう。
なら、溺れてみるのも悪くないのではないか。



「―――――――――」



少しの甘い言葉を吐けば
悟空の顔は赤く染まった。

この顔が見れるなら。
嬉しそうに頬を染める顔が見れるなら
血が滲むような辛い言葉よりも
お前が笑顔になれる甘い言葉を。






そして、彼は溺れていく。















+++END+++

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