戦場を駆る悪魔の物語-運命編-

□PHASE8:敵の姿
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ジブラルタルを目指していたミネルバは補給のためにディオキア基地に入港していた

「ようやくディオキアまでたどり着いたわね」

「ああ。セイバーとパラディンの予備パーツもディオキアに届いてるらしい。どちらもカーペンタリアやガルナハンでは間に合わなかったからな」

アスランの言う通り急遽ミネルバに乗艦することになってしまったレナとパラディン。機体と身一つで地球に降下してきたアスランとセイバーは予備パーツが無く、最低限の修理しかされていなかった

幸い二人ともそこらへんのパイロットとは桁違いの実力があるため機体の損傷も少なかったが

「まあ今日一日パイロットは自由にしていいって艦長も言ってたし、久々の休暇を満喫しようかしら」

「そうするか」

すっかり休日モードのレナとアスランが艦を降りると、何やら騒がしい声が聞こえてきた

何事かと喧騒の方へ目を向けると、ディオキアのザフト兵達による人だかりができており、また基地の外のフェンスにも老若男女沢山の住民が集まっていた

「嘘…………」

「あれは………」

彼らの視線の先、そこにいたのは

『ディオキアのザフト兵のみなさ〜〜ん!ラクス・クラインで〜〜す!』

ピンクに塗装されたザクの手の上に乗るラクス、否ミーア・キャンベルがいた

「ラクス・クラインの慰問ライブ!?マジ!?」

「ああ!早くいこうぜ!」

絶句状態のアスランとレナの横をヴィーノとヨウランが通り過ぎる

他のミネルバクルー達もラクスの慰問ライブに大喜びで走っていき、人だかりの中に消えていく

アスランは驚きを表情に出すことはしなかったが、内心ではミーアが現れたことに戸惑いを感じていた

「あれ?隊長はご存知なかったんですか?ラクスさんがお出でになること」

背後からルナマリアとメイリンがやってきてはなしかける

「あ、ああ……」

「まあ連絡とってる時間なんてなかったでしょうしね」

ルナマリアの言葉に対しアスランは曖昧な返事しかできない

今そこで歌っているのはラクスではなくミーアだということを知っているのはミネルバではアスランのみ。またアスランとラクスの婚約関係がなかったことになっていることを知っている人物も数少ない

世間的には未だにアスランとラクスは婚約者同士なのだ
















「退屈過ぎる……」

ミーアが歌うステージとなっているザクのコクピット内でシュウキは一人言葉を漏らす

デュランダルの依頼でミーア護衛の任に就いているシュウキだがこれほどやり甲斐のない仕事は初めてだった

ザフト兵だった頃にシーゲル・クラインの護衛に就いたこともあったが、その時ですらテロリストの襲撃が何度かあったのだがこの仕事中に襲撃が起こったことはなかった

よってシュウキは一度も戦闘を行うことはなく。MSに乗るのも実は結構久々だったりするのである

やがてミーアが歌い終わると、一層歓声が巻き起こる

「ありがとう!勇敢なザフト軍兵士のみなさ〜〜ん!平和のために、
ありがとう!」

(今目の前にいる人間がラクスではないと思っている人間は誰一人としていないんだろうな)

湧き起こる歓声がシュウキには酷く耳障りに感じた
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