戦場を駆る悪魔の物語-運命編-
□PHASE7:不満
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オーブ近海で連合艦隊を突破したミネルバは目的地だったカーペンタリアに着いた
ミネルバはここで補給と修理を受け、本来の配備先である宇宙へ戻ることになるだろう
そうなるとパイロットは必然的に暇になり、暇を持て余したレナは朝からシミュレーターに興じていた
「へー。こういう戦い方もあるんだ。後で試してみよっと♪」
笑顔で呟くレナがやっているのは、戦場は宇宙。自分が乗るのはザフト初期の機体であるジンハイマニューバ2型。そしてあろうことか相手は自分が乗るパラディンだった
しかもシミュレーターのレベルは最高。つまり限りなくレナ自身に近いかそれ以上のレベルを相手に最弱の機体で挑んでいるのだ。他のザフト兵が見たら卒倒する鬼畜ぶりである
だが別にレナはマゾでもなんでもないというか寧ろサドである
なのに何故そんな鬼畜な訓練をするのか
それは偏に自分の気づかなかった機体の使い方を見いだすためだ
ザフト製のシミュレーターのコンピューターは実際の戦闘データをベースにしている。そのため相手を自分に設定した時自分と同レベルかそれ以上の思考を持つ。それと戦うことで今まで自分が考えつかなかった戦術が出てきたりして学ぶことができるのだ
シュミレーションをただの練習で終わらせない
七つの大罪クオリティーは伊達ではないのだ
『エクスタリア特務兵。至急艦長室に』
タリアの声で呼び出しの放送が聞こえた時。パラディンのエクスカリバーUがジンハイマニューバ2型を斬り裂き、モニターに『YOU DEAD』の文字が表示された
レナは無言でシミュレーターの電源を切ると早足で艦長室へと向かった
「失礼します。お呼びでしょうかかんちょ……え?」
艦長室に入ったレナを待っていたのは椅子に座るタリアとその脇に立つアーサー。そしてザフトレッドの軍服を着た元同僚、アスラン・ザラの姿だった
「やあ、レナ」
「艦長。どういうことか説明していただけますよね?」
眼光を鋭くして問い詰めるレナ。脇にいるアーサーは既にびびりまくっている
「議長が送ってきた増員よ。ご丁寧に新型MSとFAITHの称号まで与えてね」
「はあ!?」
「しかも私までFAITHに任命されたわ」
「つまりこの艦にはFAITHが三人いると?」
「そうなるわ」
レナは驚きを通り越して呆れてしまう
FAITHというのは本来議長直属の精鋭であり、独自の部隊と独自の作戦立案、実行、命令権を持つ。つまり通常の指揮系統から外れるため、FAITHが複数名同じ部隊にいるのは望ましくない
今まではタリアが艦の指揮に集中するためにレナが前線のMS隊を牽引し、戦闘に不慣れな新兵達を引っ張ってきた
だがそれが三人になれば指揮系統は滅茶苦茶になってしまうのは当然だ
「命令だから仕方ないわ。レナはこれまで通りMS隊の隊長をやってもらうけどアスランはどうする?」
「俺も一応レナの指揮下に入ります」
「構いません。どうせ私は宇宙に戻ればミネルバから離れて自分の隊に戻りますから」
レナは本来ミネルバのパイロットではない。レナには自分の部隊があり、彼女がいなければ隊は回らないのだ。戦争が再び始まった今部隊を一つ放置しておく余裕はない
「残念だけどレナ。それは当分叶わないようよ」
「へ?」
「ミネルバはこれからジブラルタル基地に向かい、駐留軍を支援せよ。だそうだから」
「じゃあ私は!?私が宇宙に上がるための準備がある上でのことでしょうね!?」
「エクスタリア隊はジブラルタルへ降下。ジブラルタルでミネルバと合流して任務にあたるそうよ」
「なにそれ!?喧嘩売ってるの!?もう殴っていいわよね!?」
「落ち着けレナ。今のミネルバにはお前が不可欠なんだ。新兵にしてみればいきなりやってきた奴が隊長です。なんていい気分じゃない。それを考えての人事だろう」
怒りが頂点に達しているレナをアスランが宥める
アスランの説得により一応レナには納得してもらい。二人は退室した