社内恋愛とか勘弁して下さい
□刺激的なカッコウはご遠慮ください!
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昼休み。ご飯を食べ終え、お弁当をロッカーに戻しに行くと、そこでなにやら舞衣が何かを縫っていた。
「なにしてるの?舞衣」
彼女は手を止めてこちらを見た。その表情はちょうっとだけ幸せそうで。
「カーディガン、縫ってるの。ちょっとほつれてきちゃったから・・・」
「へぇ、大事にしてるのね」
「うん。ネジ先生にもらったものだから」
なるほど、それは大事にするわけだ。そしてまた手を動かし始める舞衣。
彼女の隣に立って、テンテンは問う。
「何でカーディガンなんかもらったの?」
「わかんない。これ着ろって渡されただけだし・・・」
首をかしげる舞衣に、テンテンの好奇心に火がつけられた。
そして彼女が向かったのは、言わずもがな。
ネジ先生のいる診察室。
「ネジせんせー」
「ん?なんだどうした」
「あの、舞衣がいつも着ているカーディガンの件なんですけど・・・」
ニヤニヤしながら問えば、先生の顔がしかめられる。
聞かれるのが嫌というか、「とうとうきたか」見たいな感じ。
「なんで舞衣にあげたんですか?教えてくださいよ 」
「舞衣、聞いていないか?あいつに聞かれたら間違いなく医学書が飛んでくる」
「そんな変な理由なんですか?でも舞衣ならロッカー室で裁縫中よ」
「そうか、なら・・・」
絶対に言うなよ、念を押され、ネジ先生は静かに語り居始めた。
そう、それは数年前、桜が満開になった春のこと・・・
「今日からよろしくお願いします」
まだ初々しい姿の舞衣は、勢いよく頭を下げた。
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
可愛いな、この子が来てくれてよかったな、と、わずかに頬も緩む。
とりあえずナース服に着替えさせねばならない。
俺が三日ほど徹夜して作り上げた特製ナース服(スカートがちょっと短め)を渡す。
「じゃあ、まず着替えてきてくれ。ロッカーには名札入れておいたから、そこを使ってくれ」
「はい!!」
パタパタとロッカー室に消えていく彼女の後姿を見送りながら、俺も仕事に取り掛かった。
しかし、ここで事件は起こったのだ!!
「あの・・・先生」
「ん?ああ、着替え終わったか・・・」
後ろから聞こえた声に、俺は振り返る。
そして目に飛び込んできた光景に、俺は思わず飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
ナース服はもちろん白のワンピース、そこに結構くっきり見えちゃってるピンクの水玉柄。
随分可愛い下着だ・・・とガン見してもいいものか、だからと言って目を反らすものどうかと思う。
俺のキョドっているところを見て首傾げる舞衣は、今自分がどんな格好なのか知らないのだろう。
そういえば。
ふと、自分が昔女装で使っていた(なぜ女装していたのかは聞かないでほしい、黒歴史だ)カーディガンを医院のどこかに放置していたのを思い出す。
猛烈な勢いでそれを見つけ出し、慌てて肩に掛けてやる。
「先生、これは・・・?」
「き、今日明日は春なのに冷え込むらしいからな、これを着るといい」
なんだか無理な言い訳のように聞こえてならない。
それでも舞衣はカーディガンの裾をぎゅ
っと握って、
「ありがとうございます!!」
「・・・・と、いうわけで俺は舞衣に恋をしたんだ。いやー本当にあの時の舞衣は可愛かったんだぞ。今でも可愛いがな・・・ゴフッ?!!!」
風を切ってぶっ飛んできた医学書は、ネジ先生の顔面に吸い込まれるようにしてめり込んだ。
投げたのはもちろん、部屋の入り口付近に立っている舞衣。
「先生・・・初日から私のことそんな目で見ていたんですね・・・」
「いや、舞衣これは違うんだ、いや違わ
ないけれども違うんだ!!」
「こんの変態!!バカ!!くたばれ!!」
「少しだけ待ってくれ、って、ぎゃああああああああ!!!」
断末魔に近い悲鳴を上げながらも、舞衣
が投げたすべてを体で受け止めているネジ先生。
それに、顔を真っ赤にしながらメスを投げようとしている舞衣。
それはさすがに受け止められないと、先生は舞衣を宥めにかかる。
これもすべて、愛ゆえにというわけか。
「ほんとラブラブね、この二人は・・・」
いちゃついているようにしか見えないバカップルを置いて、テンテンは診察室を出た。
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