短編書庫

□カスタード・プディング
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「蒼ちゃん!今日も作ってきたよ」

満面の笑みを浮かべる私の彼氏、佐助がラッピングされたプレゼントを差し出す。
仄かに香る甘ったるい匂いのそれは、私の大好物だったカスタード・プディング。
私の大好物であると知ってから彼は、よく作ってくれる。味に関しては下手にそこらの店で買うよりおいしい。

「わぁ、いい匂い。ありがとう」

受け取ったプレゼントを、いかにも大切そうに胸に抱く。
これが、食べられることもなく冷蔵庫の隅で忘れられる存在になることを、きっと彼は知る由もない。
そんな佐助は、受け取ってもらったことが嬉しいのか、今にもとろけそうな笑みを浮かべた。

初めは好きでしょうがなかった、このプディングも・・・佐助のことも。
でも、気づいちゃったんだ、佐助身に纏う、バニラエッセンス以外の甘い香りに。
どんなスイーツにも消せないような、甘い、甘い。

「・・・何か嬉しすぎて、食べちゃうのもったいないな。大事にとっておきたいくらい」
「それじゃあ腐っちゃうでしょーが」

こつんと私の額を小突く殻の笑顔は、私だけに向けられているはずなのに。
時折香る甘ったるい女物の香水の香りに、吐き気がする。
顔をしかめるが、タイミングよく予鈴が鳴る。
次は移動教室だから、と私の頭を一撫でして小走りにその場を去っていく佐助。

甘ったるいスイーツには嫌気がさしたの。

彼の姿なんて本当はもう見たくもない。

はずなのに。


「・・・まだ、好きなんだよ。
 ・・・まだ、あなたを求めているんだよ」



カスタード・プディング



煮えきらぬ私の想いと同じように、今日も冷蔵庫の奥で蟠るプディング。
これらを全て、払拭できる日は来るのだろうか。

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