短編書庫

□IF
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「ねえ三成」

「何だ」

さっきから何かの問題集を黙々と解いているから邪魔をしないようにしていたのだが、結局話しかけてしまった。
「もしもさ、私と出会えていなかったら、三成はどうする?」
「どうするも何も、ごく普通に生活するだけだ」
ロマンもくそもない彼の素っ気ない回答に、私は唇を尖らせた。
「何でそういうこと言うかな〜?例えばさぁ、世界の果てまでおまえを探しに行く!とかさぁ、もっとロマンチックなこといえないの?」
「蒼に出会っていないというならば、私は蒼のことを知らないのだろう。どうやって探すのだ」
「あ〜それもそうか・・・」
ちょっと聞き方が悪かったか。それならばと、私は質問を変えてみる。
「もしもさ、今私がブラジルとかに行ったら、三成はどうする?」
「貴様はブラジルに行くのか」
「いや行かないけど・・・もしもの話だってば」
すると何かを考えるようにしばらく黙る三成。私も彼の返答を待つべく、じっと彼を見つめる。
しばらくしてから三成は何を思ったか、私をぎゅっと抱きしめた。自分からくっついてくるなんて、三成にしては珍しい。
「なっ、どうしたの?」
「私はもしもの話が嫌いだ。貴様はブラジルになど行かないのだろう」
「はい、行きませんけど・・・」
「貴様は私のそばにいるのだろう、ならばその事実だけで十分だ。それとも蒼は、何か不満でもあるのか?」
珍しく心配そうな表情で私の顔を覗き込む。

何だこいつ可愛い。

「いいえ、そんなことないです」
ニッコリ笑顔でそういうと、安堵したように三成は私のことをさらにぎゅっと抱きしめてくれた。
猫のように擦り寄ってくる三成を、同じようにぎゅっと抱きしめ返した。





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