短編書庫

□イジワルな王子様
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とても麗しくて優しくて、まるで王子様みたい、と女子に絶大な人気を誇る半兵衛。
私も初めて彼を目にしたとき、他の女の子と同じように騒いでいた。
それなのに、いつからこんな関係になってしまったのだろう。

「さっさとしてくれたまえ。君の黒板消しが終わらなきゃ、僕も帰れないじゃないか」
腕を組み、冷ややかな目で私を見る半兵衛。今日は二人で日直の日だった。周りでは「うらやましい!」と騒ぐ女子もいたのだが。
「だったら手伝ってくれてもいいと思うんだけど・・・」
「何を言っているんだい?僕がここで黒板消しを手伝ったら、僕の仕事が増えるじゃないか。すでに日誌も書いて授業の号令もしているのに、不公平だと思わないのかい?」
そういいながら必死に背伸びをしているのを笑っている。
仕方ないじゃないか、こうしても一番上がきれいに消せないんだよ!!
この意地悪な半兵衛を見て、誰が「日直変われ」と言ってくるのだろう。いや、実際こんなイジワルされるのは、私と官兵衛ぐらいなのだけれど。
「イジワル!ドS!鬼畜!」
「鬼畜で結構、むしろほめ言葉だよ」
私の背後に立つ半兵衛。今度は何をするのかと思えば、彼の端正な顔が私の顔のすぐ横に来て、
「僕は好きな子ほど苛めたくなる性質なんだ」
「・・・っ?!」
甘い囁きに、私はクラクラと眩暈を起こす。それは、つまり。
私の顔は間違いなく真っ赤だろう、だって顔どころか全身が燃えるように熱い。
「だから、覚悟してくれたまえ」
そんな私の反応に満足したのか、クスクス笑いながら離れていく半兵衛をキッと睨む。
それでも、この鬼畜な男が。
「好き・・・」
「・・・・・え?」
「い、いや、なんでもない!!本当に何でもない!」
黒板に視線を戻し、また背伸びをする。
しばらく突っ立っていたらしい半兵衛だが、やがて私の黒板消しを強奪した。
「君に任せていると、いつもでたっても終わらなさそうだ」
「・・・イジワル」


イジワルな王子様

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