短編書庫

□スノウホワイト
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昨晩、初雪が降った。暴風雪でロマンチックなものにはほど遠かったが、少し積もって地面はぐしょぐしょになっていた。
それで今日の帰りは「蒼が転んで病院送りになっても困りますから」と、変態なりの優しさで、光秀と一緒に帰る約束をした。
しかし、私は用事(っつーか補習)でかなり遅くなってしまっていて。
あたりはすでに真っ暗、人影ほとんどない。
流石にあの変態も帰ったかな。
そう思いながら待ち合わせ場所であった校門前まで行くと・・・

ぽつんと、光秀が佇んでいた。
もう辺りは暗くなって、一つしかない街灯がぼんやりと彼と、ふわふわと舞い降りる綿雪を照らし出している。
銀色の髪の毛が白い光を反射し、静かに空を見上げる彼。

なんか、綺麗だ。

周りの音が急にすう…と消えたような感覚。彼しか見えなくなる。
ふと、彼がこちらを見る。
「蒼。遅いですよ。それに来たのなら話しかけてください」
少し首を傾げ、ふんわりと笑む。長髪がさらりと流れた。
「あ・・・うん」とか生返事しかできなくて、ただただ彼に見とれている。
そんな私の顔を覗き込み、ふと頬に手を添えられた。その冷たさにびくりと体を強張らせ、さらに光秀を見つめた。
「蒼・・・」
なんだ、これ。すごくドキドキしてる。
そんな私に投げかけられたのはとんでもない一言だった。
「今ここで転んでくれませんか?」
「・・・・・・へ?」
「無様に顔から突っ込んで、雪と泥にまみれるだけでいいですから。遅れた詫びだと思って。」
ニッコリ笑顔で爆弾発言してくれた彼。私は呆れを通り越し無表情になった。
「どうしました、蒼?」
「・・・・・せ」
「え?」
「私のトキメキを返せーーっ!!!」
ド変態は私が繰り出した拳をもろに受け、逆に雪に顔を埋めた。



スノウホワイト

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